概要: フリーランスエンジニアの収入を最大化し、税金負担を軽減するための実践的な方法を解説します。経費管理のコツや税金シミュレーション、万が一の際の保険についても網羅しています。賢く稼ぎ、安心してフリーランス生活を送るための情報が満載です。
フリーランスエンジニアとして活躍する上で、税金対策と経費管理は手取り収入を最大化し、事業を安定させるために不可欠です。
ここでは、公的機関の情報に基づき、フリーランスエンジニアが知っておくべき税金と経費に関する情報をまとめました。賢く稼ぎ、将来を見据えた安定したフリーランス生活を送りましょう。
フリーランスエンジニアが知っておくべき税金の基本
確定申告の基本と期間
確定申告とは、1年間の所得(収入から必要経費などを差し引いたもの)に対してかかる所得税を計算し、税務署に申告・納税する手続きです。
この手続きを行うことで、本来納めるべき税額を確定させ、過不足があれば調整します。フリーランスエンジニアにとっては、年間の事業活動の集大成ともいえる重要なイベントです。
所得税の確定申告期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までと定められています。この期間内に、前年1月1日から12月31日までの所得について申告と納税を済ませる必要があります。
フリーランスエンジニアの場合、事業所得が基礎控除額(48万円 ※合計所得金額2,400万円以下のとき)を下回る場合は、確定申告が不要となるケースもありますが、所得税の還付を受けるためや住民税の計算のために申告した方が良い場合も多いです。
また、会社員が副業でフリーランスエンジニアとして活動し、副業所得が年間20万円を超える場合も確定申告が必要です。近年では、e-Tax(電子申告)を利用する割合も増加しており、自宅からオンラインで申請することも可能です。これにより、税務署に出向く手間が省け、より手軽に手続きができるようになりました。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
フリーランスが支払う主な税金の種類
フリーランスエンジニアが支払う税金は、所得税だけではありません。主な税金の種類を理解しておくことが、適切な税金対策の第一歩となります。
一つ目は所得税です。これは1年間の所得に対して課税される国税で、所得金額が多いほど税率が高くなる累進課税制度が採用されています。所得税額は「課税所得金額 × 税率 – 税額控除額」で計算されます。
二つ目は住民税です。これは前年の所得に応じて課税される地方税で、都道府県と市町村に納めます。確定申告の情報をもとに自治体が税額を計算し、納税通知書が送付されるため、自身で申告する必要はありません。
三つ目は事業税です。特定の業種(法定業種)に該当し、かつ年間所得が290万円を超える場合に課される地方税です。エンジニア業は通常、法定業種に含まれることが多く、所得額によっては納税義務が生じます。税率は業種によって異なりますが、一般的には5%程度です。
四つ目は消費税です。原則として、前々年の課税売上高が1,000万円を超える場合に納税義務が生じます。インボイス制度導入により、免税事業者であったフリーランスも、取引先の要請などにより課税事業者になることで消費税の支払いが発生する場合があります。自身の事業規模や取引先との関係性に応じて、消費税の納税義務が発生するかどうかを確認しておくことが重要です。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
税金計算のキーポイント:収入・所得・課税所得
税金計算を正しく理解するためには、「収入」「所得」「課税所得」という三つの用語の違いを明確に把握することが不可欠です。これらは混同されがちですが、それぞれ意味合いが大きく異なります。
まず収入とは、事業によって得られた売上金額の合計、つまり「売上」そのものです。フリーランスエンジニアであれば、開発案件の報酬やコンサルティング料などがこれに該当します。
次に所得とは、収入から必要経費を差し引いた金額を指します。必要経費とは、事業を行う上で発生した費用のことで、これを計上することで収入から差し引かれ、所得額が減少します。所得が少なければ、その分税金の対象となる金額も減るため、所得を正確に計算することは節税に直結します。
そして最後に課税所得とは、所得から各種所得控除をさらに差し引いた金額のことです。所得控除には、納税者全員に適用される基礎控除や、社会保険料控除、医療費控除など、納税者個人の事情を考慮した様々な控除があります。この課税所得の金額に税率を掛けて所得税額が算出されるため、いかに課税所得を減らせるかが節税のポイントとなります。
この「収入 → 必要経費 → 所得 → 所得控除 → 課税所得」という流れを理解することで、ご自身の税金がどのように計算され、どこで節税が可能になるのかが明確になります。正確な計算と理解は、賢い税金対策の基盤となります。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
経費を最大化!賢い節税対策とは?
経費になるもの・ならないものの具体例
フリーランスエンジニアにとって、経費の適切な計上は節税の要です。経費とは、事業を行う上で「必要」と認められる支出のこと。
では、具体的にどのような費用が経費となるのでしょうか。
経費になる代表的な例としては、以下のようなものがあります。
- パソコン、ソフトウェア、周辺機器などの購入費(一定額以上は減価償却)
- インターネット回線料、スマートフォン通信費(事業使用分)
- 事務所家賃、水道光熱費(自宅兼事務所の場合は家事按分)
- セミナー参加費、書籍代などの研修費や情報収集費
- 交通費、出張旅費(クライアント訪問やイベント参加など)
- 名刺、ウェブサイト作成費などの広告宣伝費
- 文房具、インクなどの消耗品費
- コワーキングスペース利用料
- 打ち合わせ時の飲食費(会議費として)
一方で、経費にならない例も明確に理解しておく必要があります。これらは税務調査などで指摘されるリスクがあるため注意が必要です。
- プライベートでの支出(家族との食事、個人の趣味用品など)
- 税金や罰金、延滞金(所得税、住民税、交通違反の罰金など)
- 事業主自身の国民年金保険料や健康保険料(これらは経費にはなりませんが、社会保険料控除の対象となります)
- 事業主自身への給与(フリーランス自身は給与所得者ではないため)
これらの区別をしっかりつけ、証拠となる領収書やレシートをきちんと保管することが、経費管理の基本となります。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
自宅兼事務所の節税術:家事按分
多くのフリーランスエンジニアが自宅を事務所として活用していることでしょう。この場合、自宅の家賃や光熱費など、プライベートと事業で共有している費用の一部を「家事按分」として経費に計上することができます。
家事按分とは、生活費と事業費が混在している支出について、合理的な基準に基づき事業に使用した割合を算出し、その割合分を事業経費として計上する仕組みです。これにより、課税所得を減らし、効果的な節税につながります。
家事按分の対象となる主な費用は以下の通りです。
- 家賃:自宅の床面積のうち、事務所として使用しているスペースの割合
- 水道光熱費:電気代、ガス代、水道代など。事業で使用する時間や機器の消費電力などを基準に按分
- 通信費:インターネット回線料、スマートフォンの通話料・通信料など。事業で使用する時間やデータ量を基準に按分
- 固定資産税:自宅を所有している場合、建物部分の固定資産税の一部を按分
按分の割合は、厳密なルールがあるわけではありませんが、税務署に説明を求められた際に「合理的である」と判断される基準を設定することが重要です。例えば、床面積であれば「事業専用スペースの面積 ÷ 全体の床面積」、電気代であれば「パソコンや周辺機器の使用時間 ÷ 一日の合計使用時間」など、客観的な根拠を持たせましょう。
「とりあえず50%」といった曖昧な按分ではなく、具体的な証拠と基準を用意することが、税務調査時にも自信を持って説明できるポイントです。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
青色申告で最大65万円控除!
フリーランスエンジニアにとって、節税対策の切り札ともいえるのが青色申告です。
青色申告は、白色申告よりも複雑な記帳が求められる代わりに、様々な税制上の優遇措置を受けることができる制度です。中でも最大のメリットは、「青色申告特別控除」により最大65万円の所得控除を受けられる点です。
この65万円という金額は、課税所得から直接差し引かれるため、所得税額を大きく減らす効果があります。
青色申告の承認を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出すること。原則として、青色申告をしようとする年の3月15日までに提出が必要です。
- 複式簿記により記帳し、貸借対照表と損益計算書を作成・提出すること。
- e-Tax(電子申告)で申告すること、または電子帳簿保存を行うこと。(いずれも行わない場合は55万円控除となります)
複式簿記と聞くと難しく感じるかもしれませんが、会計ソフトを導入すれば比較的容易に記帳を進めることができます。会計ソフトの中には、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で仕訳してくれる機能もあり、日々の作業負担を軽減できます。
青色申告は、他にも赤字を3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」や、事業専従者給与(配偶者や親族に給与を支払った場合に必要経費にできる)などのメリットもあります。
事業を始めたら、まずは青色申告の承認申請を検討し、賢く節税につなげましょう。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
税金シミュレーションで将来の収入を予測
所得税額に影響する主な所得控除
所得控除は、納税者の個人的な事情を考慮して、所得税の負担を調整する重要な制度です。所得から一定額を差し引くことで課税所得を減らし、結果として所得税額を軽減する効果があります。
フリーランスエンジニアが特に知っておくべき主な所得控除は以下の通りです。
- 基礎控除:納税者全員に適用される控除で、合計所得金額に応じて控除額が決まります。合計所得金額が2,400万円以下の場合は最大48万円が控除されます。
- 社会保険料控除:国民健康保険料や国民年金保険料など、支払った社会保険料の全額が控除の対象となります。フリーランスにとって負担の大きい社会保険料を節税に繋げられる重要な控除です。
- 医療費控除:本人や生計を同一にする家族のために支払った医療費が、年間10万円(または所得の5%)を超えた場合に適用されます。高額な医療費がかかった際には忘れずに申告しましょう。
- 生命保険料控除:生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料などを支払った場合に適用されます。保険の種類に応じて一定額が控除されます。
- 扶養控除:所得税法上の扶養親族がいる場合に適用される控除です。扶養親族の年齢や同居の有無などにより控除額が異なります。
これらの所得控除を漏れなく適用することで、課税所得を効果的に減らすことができます。毎年の確定申告時には、ご自身やご家族の状況をよく確認し、適用できる控除を最大限に活用することが賢い節税に繋がります。領収書や証明書類の保管も忘れずに行いましょう。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
直接税金を減らす税額控除の活用
所得控除が「所得」から差し引かれるのに対し、税額控除は計算された「所得税額」から直接差し引かれるため、所得控除よりも節税効果が大きく感じられる場合があります。
フリーランスエンジニアにとっても活用できる税額控除はいくつか存在しますが、特に注目したいのがふるさと納税を活用した寄附金控除です。
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体へ寄附をすることで、寄附金控除の対象となり、実質2,000円の自己負担で返礼品を受け取りながら住民税や所得税の控除を受けられるお得な制度です。自身の年収や家族構成によって控除上限額が異なりますが、上限額内で寄附を行えば、その大部分が税金から差し引かれます。
例えば、年収600万円の独身フリーランスの場合、年間で約77,000円程度の寄附が上限となります。この上限額までふるさと納税を利用すれば、豪華な返礼品を受け取りつつ、65,000円〜75,000円程度の税金が控除されることになります。これは実質的な手取り収入アップに繋がると言えるでしょう。
他にも、特定の要件を満たす住宅ローンを組んでいる場合に適用される住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や、配当所得がある場合に適用される配当控除などがあります。
税額控除は、自身のライフイベントや投資状況によって適用できるものが変わってきます。積極的に情報収集を行い、活用できる控除は確実に申請して、賢く手取り額を増やしましょう。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
扶養制度を活用した税負担軽減
フリーランスエンジニアとして働く上で、配偶者や家族の有無によって、税金や社会保険料の負担が変わる「扶養制度」も重要な節税ポイントです。
扶養には大きく分けて「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の二つがあり、それぞれ基準となる年収額が異なります。
税法上の扶養
配偶者がいる場合、その配偶者の所得に応じて配偶者控除または配偶者特別控除が適用され、自身の課税所得を減らすことができます。
- 配偶者控除:配偶者の年間所得が48万円以下の場合に適用され、最大38万円の控除を受けられます。
- 配偶者特別控除:配偶者の年間所得が48万円超133万円以下の場合に適用され、配偶者の所得に応じて段階的に控除額が設定されています。
社会保険上の扶養
配偶者が自身の加入する健康保険の被扶養者となることで、配偶者自身の健康保険料を支払う必要がなくなります。これは主に会社員である配偶者の扶養に入るケースが考えられます。
- 被扶養者の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であること
- 被保険者(扶養する側)の年間収入の2分の1未満であること(場合によっては3分の2未満でも認められるケースあり)
これらの扶養制度を理解し、自身の家族構成や配偶者の働き方に合わせて活用することで、世帯全体の税金や社会保険料の負担を軽減することができます。
以下に、税法上の扶養と社会保険上の扶養の主な基準をまとめました。
| 制度 | 主な基準 | メリット |
|---|---|---|
| 税法上の扶養(配偶者控除) | 配偶者の所得48万円以下 | 自身の所得税・住民税が軽減 |
| 税法上の扶養(配偶者特別控除) | 配偶者の所得48万円超133万円以下 | 自身の所得税・住民税が軽減(段階的) |
| 社会保険上の扶養 | 被扶養者の年間収入130万円未満 | 被扶養者の健康保険料・年金保険料が不要 |
年収がこれらのボーダーライン付近にある場合は、どちらの扶養に入れるか、あるいは扶養から外れるかによって手取りが大きく変わるため、慎重なシミュレーションが必要です。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
フリーランスエンジニアの保険と賠償責任
国民健康保険・国民年金の基礎知識
会社員からフリーランスエンジニアになると、会社が加入していた社会保険(健康保険・厚生年金)から、自身で加入する国民健康保険と国民年金に切り替える必要があります。
国民健康保険は、自治体が運営する医療保険制度です。加入することで、病気やケガの際に医療費の自己負担が軽減されます。保険料は、前年の所得や世帯人数、自治体によって計算方法が異なりますが、所得が高いほど保険料も高くなる傾向があります。フリーランスにとっては大きな支出の一つですが、もしもの時に備える重要な制度です。
国民年金は、20歳以上60歳未満の全国民に加入義務がある公的年金制度です。将来、老齢基礎年金として給付されるほか、万が一の障害や死亡時にも給付が行われます。国民年金保険料は定額で、毎年見直しが行われます。
これらの国民健康保険料と国民年金保険料は、事業の必要経費にはなりません。しかし、確定申告の際に「社会保険料控除」として所得から全額を差し引くことができ、課税所得を減らして所得税・住民税を軽減する効果があります。
フリーランスエンジニアにとって、国民健康保険と国民年金は、セーフティネットの基礎となるものです。忘れずに加入手続きを行い、滞りなく保険料を納めることが、安心して事業を継続するための基盤となります。
万が一に備えるフリーランス向け保険
フリーランスエンジニアとして働く上で、病気やケガで働けなくなった場合や、業務上のミスでクライアントに損害を与えてしまった場合など、会社員では考えられないようなリスクに直面することがあります。
こうした「万が一」の事態に備えるために、フリーランス向けの保険への加入を検討することは非常に重要です。
特に検討したいのが、以下の二種類の保険です。
- 所得補償保険:病気やケガで長期間働けなくなった際に、一定期間、収入の一部を補償してくれる保険です。フリーランスは収入が途絶えると生活が立ち行かなくなるリスクが高いため、国民健康保険だけではカバーできない部分を補強する意味で有効です。
- 業務賠償責任保険:システム開発時のバグ、情報漏洩、納期遅延、著作権侵害など、業務遂行中に過失によりクライアントや第三者に損害を与えてしまった場合に、その賠償責任を補償してくれる保険です。エンジニアの仕事は、情報やシステムという重要な資産に関わるため、高額な賠償責任を負うリスクが潜んでいます。
これらの保険は、フリーランスエンジニアが安心して事業を継続するための「お守り」のような存在です。保険料は経費として計上できるものが多いため、税金対策の観点からも検討する価値があります。
自身の業務内容や請け負う案件のリスク度合いを考慮し、適切な保険を選ぶことで、大きなリスクから自身と事業を守りましょう。
契約時の注意点と賠償責任の範囲
フリーランスエンジニアとして案件を受注する際、クライアントとの契約書は非常に重要です。特に賠償責任の範囲については、しっかりと確認し、認識を合わせておく必要があります。
契約書には、成果物の不具合、情報漏洩、納期遅延などによりクライアントに損害が生じた場合の責任の所在や、損害賠償額の上限が明記されていることが一般的です。安易に契約に同意してしまうと、万が一のトラブル発生時に想定以上の責任を負うことになる可能性があります。
以下の点に注意して契約書を確認しましょう。
- 責任の範囲:自身の業務範囲と責任の境界が明確か。クライアント側の責務があいまいになっていないか。
- 損害賠償額の上限:賠償額が青天井になっていないか。妥当な上限額が設定されているか。通常、契約金額の数倍程度が目安とされますが、高額すぎる場合は交渉が必要です。
- 情報セキュリティ義務:クライアントから預かる情報の取り扱いに関する義務が具体的に明記されているか。
- 知的財産権:成果物の著作権や特許権などの帰属が明確か。
- 契約解除の条件:どのような場合に契約が解除されるのか、その際の責任はどうか。
不明な点や納得できない条項がある場合は、契約前に必ずクライアントと交渉し、合意形成を図ることが重要です。また、自身の業務賠償責任保険でカバーできる範囲と、契約書で求められる賠償責任の範囲を比較検討し、もし不足があれば保険の見直しも検討しましょう。
契約は信頼関係の基盤ですが、万が一のトラブルに備えて書面での確認を怠らないことが、フリーランスエンジニアとしての自己防衛策となります。
フリーランスエンジニアの注意点:脱税・バックレのリスク
意図せぬ脱税を防ぐための記録と管理
フリーランスエンジニアとして賢く稼ぐためには、適切な税金対策と経費管理が不可欠ですが、その前提として正確な記録と管理が何よりも重要です。
「知らなかった」「うっかり忘れていた」では済まされないのが税金です。意図せず脱税とみなされるような事態を避けるためにも、以下の点を徹底しましょう。
- 領収書・レシートの保存:事業に関わる支出の証拠となる領収書やレシートは、すべて大切に保管しましょう。電子帳簿保存法に対応した会計ソフトやアプリを活用すれば、スマートフォンのカメラで撮影するだけでデータ化でき、管理が楽になります。これらの帳簿書類の保存期間は、白色申告の場合は7年間、青色申告の場合は7年間(※一定の要件で10年)と定められています。
- 会計ソフトでの正確な記帳:日々の取引を漏れなく、かつ正確に記帳することが重要です。会計ソフトを利用すれば、勘定科目の自動仕訳機能や銀行口座との連携機能により、大幅に効率化できます。
- 定期的な収支確認:月に一度など定期的に収支を確認し、帳簿と実際の現金・預金残高が一致しているか確認しましょう。これにより、記帳ミスや計上漏れを早期に発見できます。
もし、意図せず申告を忘れたり、誤りがあったりした場合は、ペナルティが課される可能性があります。具体的には、税金を過少に申告した場合の過少申告加算税、申告自体を怠った場合の無申告加算税、そして悪質な隠蔽があったとみなされた場合の重加算税などがあります。これらの加算税は本税に上乗せして課されるため、大きな負担となります。
もし不安な点があれば、税理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが、意図せぬ脱税リスクを回避する最も確実な方法です。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
信頼を失う「バックレ」行為の代償
フリーランスエンジニアとして最も避けるべき行為の一つが、クライアントや案件から突然音信不通になる、いわゆる「バックレ」です。
一時的な感情や困難から逃避したくなる気持ちは理解できなくもありませんが、この行為はフリーランスとしてのキャリアに致命的な悪影響を及ぼします。
「バックレ」の代償は非常に大きく、以下のようなリスクに直面する可能性があります。
- クライアントへの重大な損害:プロジェクトの遅延、システムの停止、機会損失など、クライアントに具体的な金銭的損害を与える可能性があります。これにより、損害賠償請求に発展するリスクもゼロではありません。
- 業界内での信用失墜:フリーランスは「信用」が全てです。一度バックレてしまうと、その情報は業界内で共有され、二度と仕事が来なくなる可能性があります。フリーランスコミュニティやSNSなどで悪評が広まることも珍しくありません。
- 自身の精神的負担:一時的に逃げられたとしても、罪悪感や将来への不安が常につきまとい、精神的に追い詰められることになります。
- 長期的なキャリアへの悪影響:転職や新たな案件獲得の際に、過去のバックレが発覚し、採用や契約が見送られるケースも十分に考えられます。
もし案件の途中で困難に直面したり、体調を崩して業務継続が難しくなったりした場合は、すぐにクライアントに連絡し、状況を正直に伝え、解決策を共に探す姿勢が重要です。
誠実な対応を心がけ、報告・連絡・相談を徹底することが、フリーランスとして長く活躍するための絶対条件であると心に留めておきましょう。
公的機関や専門家を頼る重要性
フリーランスエンジニアが直面する税金や経費、そして事業運営に関する課題は多岐にわたり、その制度は複雑で頻繁に改正されます。これらすべてを一人で完璧に理解し、対応し続けることは非常に困難です。
だからこそ、公的機関が提供する情報や、専門家の知見を積極的に頼ることが、賢く、そして安心して事業を運営するための鍵となります。
情報収集の第一歩としては、国税庁のウェブサイトを定期的に確認することが重要です。確定申告の手引き、最新の税制改正情報、Q&Aなどが豊富に掲載されており、多くの疑問を解決できます。
また、税務署の窓口では、確定申告に関する個別相談を受け付けており、e-Taxの利用方法についてもサポートを受けることができます。国税庁のチャットボットや電話相談も活用することで、疑問点を効率的に解消できます。
さらに、個別の事業状況や複雑な税務上の判断が必要な場合は、税理士に相談することをお勧めします。税理士は税務の専門家として、確定申告書の作成代行はもちろん、節税対策のアドバイス、記帳指導、税務調査の対応など、幅広いサポートを提供してくれます。
税理士報酬は発生しますが、専門家のアドバイスにより、自身では見つけられなかった節税策を発見したり、将来を見据えた経営計画を立てたりすることで、結果的に大きなリターンを得られる可能性が高いです。
「餅は餅屋」というように、専門家の力を借りることで、本業であるエンジニアリングに集中できる環境を整え、事業の成長に繋げましょう。(出典:2025年11月時点の公的機関情報に基づく)
フリーランスエンジニアとして成功を収めるためには、優れた技術力はもちろんのこと、税金対策や経費管理、そしてリスクヘッジといったビジネススキルが不可欠です。
本記事で紹介した基本をしっかりと押さえ、必要に応じて専門家のサポートも活用しながら、賢く事業を運営していくことが、安定したフリーランス生活へと繋がります。適切な知識と準備で、安心して本業に集中できる環境を構築しましょう。
【免責事項】
本記事は、2025年11月時点の公的機関の情報に基づき作成されています。税制は改正されることがありますので、最新の情報については国税庁などの公的機関のウェブサイトをご確認ください。また、個別の税務に関するご相談は、税理士にご相談ください。
まとめ
よくある質問
Q: フリーランスエンジニアにとって、どのような税金対策が有効ですか?
A: 青色申告による節税、必要経費の漏れなく計上、小規模企業共済やiDeCoなどの制度活用が有効です。特に青色申告は最大65万円の特別控除が受けられるため、積極的に活用しましょう。
Q: フリーランスエンジニアが経費として計上できるものの目安はどれくらいですか?
A: 事業を行う上で直接・間接的にかかった費用は経費として計上できます。例えば、パソコンやソフトウェア、家賃(自宅兼事務所の場合)、交通費、通信費、書籍代、セミナー参加費などが該当します。収入の20~30%程度を目安にする方もいますが、事業内容によって大きく異なります。
Q: 税金シミュレーションはどのように行えば良いですか?
A: 会計ソフト(freeeなど)を利用すると、収入と経費を入力するだけで簡易的な税金シミュレーションが可能です。また、税理士に依頼して詳細なシミュレーションを行ってもらうこともできます。
Q: フリーランスエンジニアが加入すべき賠償保険にはどのようなものがありますか?
A: 業務遂行中に発生した事故やミスにより、クライアントや第三者に損害を与えてしまった場合に補償される「請負賠償責任保険(PL保険)」や、情報漏洩リスクに備える「サイバー保険」などがあります。ご自身の業務内容に合わせて検討しましょう。
Q: 脱税やバックレはどのようなリスクがありますか?
A: 脱税は刑事罰の対象となる可能性があり、重い罰金や懲役刑が課せられることもあります。また、税務調査の対象となり、追徴課税や延滞税が課されるだけでなく、信用を失い、今後の受注に影響を与えます。バックレは契約不履行となり、損害賠償請求やブラックリストに載るリスクも考えられます。