ネットワークエンジニアの働き方：リモート・在宅勤務の実態とキャリア

ネットワークエンジニアとして働く皆さま、あるいはこれからその道を目指す方々へ。

技術の進化が目覚ましいIT業界において、ネットワークエンジニアの働き方も大きく変化しています。特に、リモートワークの普及や労働時間の見直し、そして多様なキャリアパスの選択肢は、この職種の魅力を一層高めていると言えるでしょう。

この記事では、最新のデータに基づき、ネットワークエンジニアの働き方の実態、キャリアパス、そして将来の展望について詳しく解説します。あなたの働き方やキャリア形成のヒントになれば幸いです。

ネットワークエンジニアのリモート・在宅勤務の現状

テレワーク導入の現状と背景

新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、日本企業におけるテレワーク導入は急速に進みました。

総務省の「令和5年通信利用動向調査」によると、民間企業のテレワーク導入率は約50%に達しています。これは、企業のデジタル化推進と従業員の柔軟な働き方へのニーズが高まっていることを示唆しています。

特に正規雇用社員のテレワーク実施率は22.6%で、前年同期比で微増しており、テレワークが働き方の選択肢の一つとして定着しつつあることがうかがえます（パーソル総合研究所「第9回・テレワークに関する調査」）。

一方で、従業員規模別に見ると、1,001名以上の大企業ではテレワーク実施率が22.7%に減少しており、出社回帰の動きや、特定の職種や業務内容によって実施率に差がある現状も見て取れます。政府も総務省、厚生労働省、国土交通省、経済産業省が連携し、テレワークの普及を推進しており、今後もその動向が注目されます。

ハイブリッドワークの普及と継続意向

コロナ禍を経て、多くの企業では完全な在宅勤務ではなく、出社とテレワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」が主流となりつつあります。

国土交通省「令和5年度 テレワーク人口実態調査」では、週1～4日テレワークを実施する割合が増加傾向にあることが示されています。この形態は、オフィスでの直接的なコミュニケーションのメリットと、自宅での集中作業のメリットを両立できるため、多くの企業と従業員に支持されています。

テレワーク実施者の意識調査では、80.9%が「今後もテレワークを続けたい」と回答しており、その継続希望意向は高止まりしています（パーソル総合研究所「第9回・テレワークに関する調査」）。この結果は、従業員がテレワークによるワークライフバランスの向上や生産性のメリットを実感していることを強く示しており、今後も柔軟な働き方が求められるでしょう。

テレワーク導入における課題と解決策

テレワークが定着しつつある一方で、その導入にはいくつかの課題も存在します。

総務省「令和5年通信利用動向調査」によると、日本においては、社内で「使いたいサービスがない」ことがテレワーク実施が困難な理由として30.5%を占めています。これは、企業におけるITインフラの整備やツールの導入が追いついていない現状を示しています。

また、勤務先からテレワークが認められないことも、実施率低下の一因として挙げられています。これらの課題を解決するためには、以下のような取り組みが不可欠です。

• 適切なITインフラの整備: セキュアかつ安定したネットワーク環境、クラウドサービスの活用。
• セキュリティ対策の強化: 総務省が策定・公表している「テレワークセキュリティガイドライン」に沿った対策。
• 企業文化の変革: テレワークを前提とした評価制度やコミュニケーションルールの確立。

ネットワークエンジニアは、これらの課題解決において、セキュアで快適なリモートワーク環境を構築・維持する上で中心的な役割を担います。安定した接続性、データの保護、VDI（仮想デスクトップインフラ）の導入など、専門知識が多岐にわたって求められる分野です。

ネットワークエンジニアの残業時間とワークライフバランス

情報通信業における労働時間の変化

かつて情報サービス産業は長時間労働が問題視されることも少なくありませんでしたが、近年では「働き方改革」の進展により、労働時間の実態に変化が見られます。

毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報によると、情報通信業の平均月間実労働時間は157.3時間で、前年と同水準を維持しています。内訳を見ると、所定内労働時間は141.5時間で微減している一方で、所定外労働時間（残業時間）は15.8時間で微増しています。

しかし、全体的な傾向としては、厚生労働省「毎月勤労統計」のデータが示すように、2017年度には月間総実労働時間が158.9時間（年間換算1907時間）まで減少しており、長時間労働は減少傾向にあると言えるでしょう。

IT業界全体で、労働時間の適正化とワークライフバランスの改善が喫緊の課題として認識され、様々な取り組みが進められています。

働き方改革と残業時間削減の取り組み

厚生労働省の指摘によれば、情報通信産業は他の産業に比べて、働き方改革が比較的速いペースで進んでいることが示唆されています。

長時間労働の背景には、「関係者のコミュニケーション不足」があるとし、プロジェクトの成功にはプロジェクト・マネジメントと人材の総合的な能力が鍵を握るとされています。このため、企業は以下のような取り組みを通じて、残業時間の削減と生産性の向上を図っています。

• プロジェクトマネジメントの強化: 適切なタスク管理、進捗管理、リソース配分。
• 業務プロセスの見直し: 無駄な作業の削減、自動化ツールの導入。
• 組織全体の意識改革: 定時退社の奨励、休暇取得の促進。

ネットワークエンジニアも、自動化技術の導入（IaC: Infrastructure as Codeなど）や、効率的な監視・運用体制の構築を通じて、自身の業務だけでなく、組織全体の残業時間削減に貢献することが可能です。

テレワーク下での労働時間管理

テレワーク環境下においても、労働時間管理の重要性は変わりません。厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、法定労働時間を超えた場合は割増賃金（残業代）の支払い義務が生じることが明記されています。

そのため、企業はPCログや勤怠管理システムなどの客観的な記録と突き合わせ、正確な労働時間管理を行う必要があります。これは、従業員の健康を守り、適切な報酬を支払うために不可欠です。

テレワークでは自己管理能力が求められますが、企業側も従業員が過重労働に陥らないよう、業務状況を可視化するツールの導入や、定期的な面談を通じてサポート体制を整えることが重要です。

ネットワークエンジニアは、こうした勤怠管理システムやVPN接続状況の監視など、労働時間管理をサポートするITインフラの設計・運用にも関わる機会があり、適切な労働環境の構築に貢献できます。

ネットワークエンジニアの収入とキャリアパス

平均年収とキャリアアップによる収入増

ネットワークエンジニアの仕事は、ITインフラの根幹を支える重要な役割を担うため、その専門性は高く評価されています。

厚生労働省 職業情報提供サイトjobtagによると、ネットワークエンジニア（システムエンジニア（基盤システム））の平均年収は660.4万円です。これは日本の平均年収と比較しても高い水準であり、専門職としての価値が示されています。

特に、要件定義や設計などの上流工程を担当するネットワークエンジニアの平均年収は約680万円と算出されており、経験とスキルを積み重ねてキャリアアップすることで、さらに高い収入を得ることが可能です。

年収は、担当するプロジェクトの規模、企業規模、取得している資格、そして何よりも個人の専門性と経験によって大きく変動します。継続的な学習と明確なキャリアパスの選択が、収入増に直結すると言えるでしょう。

多様なキャリアパス：スペシャリスト、ゼネラリスト、フルスタック

ネットワークエンジニアのキャリアパスは、大きく分けて「スペシャリスト」「ゼネラリスト」「フルスタック」の3つの方向性があります。それぞれが異なる専門性とスキルを追求し、独自の価値を生み出します。

• スペシャリスト:

  特定の技術分野に特化し、高度な専門知識・技術力を追求する道です。例えば、セキュリティエンジニアとしてネットワークセキュリティの最前線で活躍したり、ITコンサルタントとして企業のIT戦略を立案・支援したりします。CiscoのCCIEや国家資格のネットワークスペシャリスト試験など、難関資格の取得が専門性を証明する上で非常に重要となります。

• ゼネラリスト:

  ネットワーク技術を軸にしながらも、サーバー、データベース、クラウド、セキュリティなど、幅広いIT分野の知識を習得し、全体を俯瞰できる能力を養う道です。将来的には、チームリーダーやプロジェクトマネージャーとして、大規模プロジェクトを統括する役割を目指すことができます。ITコンサルタントとしてのキャリアも選択肢に入ります。

• フルスタック:

  ネットワークからサーバー、アプリケーション開発まで、ITシステム全体を一貫して担当できるエンジニアを目指す道です。プログラミング言語（Pythonなど）、クラウドアーキテクチャ（AWS, Azure, GCPなど）、DevOpsの概念など、非常に幅広い知識とスキルが求められます。スタートアップ企業やアジャイル開発環境で特に重宝される存在です。

キャリアアップのためのスキル習得と資格

ネットワークエンジニアがキャリアアップを目指す上で、スキル習得と資格取得は非常に有効な手段です。

一般的には、ネットワークの運用・保守といった下流工程からスタートし、要件定義、設計、構築といった上流工程へとステップアップするのが王道とされています。上流工程では、顧客との折衝能力やプロジェクトマネジメントスキルがより強く求められます。

また、大規模なネットワークの設計・構築プロジェクトに携わる経験は、自身の市場価値を大きく高めます。現代においては、オンプレミス環境だけでなく、AWSやAzure、GCPといったクラウドサービスのスキル習得も非常に重要です。クラウド環境におけるネットワーク設計・構築の知識は、クラウドエンジニアやセキュリティエンジニアといった他の専門分野へのキャリアチェンジにも繋がります。

さらに、CCNAやCCNP、LPIC、情報処理安全確保支援士などの資格取得は、体系的な知識を身につけ、自身の専門性を客観的に証明する強力な武器となります。

ネットワークエンジニアの多様な働き方：副業や男女比

副業を通じたスキルアップと収入源の多様化

近年、柔軟な働き方が浸透する中で、ネットワークエンジニアが副業を行うケースも増えてきています。多くの企業が従業員の副業を容認する方向に舵を切っており、これはエンジニアにとって大きなメリットをもたらします。

副業は、本業では経験できないような新しい技術や異なる業界のプロジェクトに挑戦する絶好の機会を提供します。例えば、スタートアップのインフラ構築支援や、個人のスキルを活かしたコンサルティングなど、多岐にわたる選択肢があります。これにより、自身のスキルセットを広げ、市場価値を高めることが可能です。

さらに、副業を通じて複数の収入源を持つことで、経済的な安定性を高めることもできます。フリーランスとして独立するための足がかりとしたり、特定の分野での専門性をさらに深めたりと、副業はキャリア形成の新たな可能性を広げる手段となり得るでしょう。

ネットワークエンジニアにおける多様な人材の活躍

IT業界全体で、性別や年齢、国籍などに関わらず、多様なバックグラウンドを持つ人材の活躍が推進されています。ネットワークエンジニアの世界も例外ではありません。

かつては男性の比率が高かったITエンジニア職ですが、近年では女性エンジニアの数も着実に増加しています。技術力と経験が重視される職種であるため、性別に関わらず誰もがキャリアを築ける環境が整備されつつあります。

企業も、育児や介護と仕事を両立しやすいよう、時短勤務制度やフレックスタイム制、そして前述のテレワーク・ハイブリッドワークといった柔軟な働き方を導入することで、多様な人材が長く活躍できるような環境づくりに力を入れています。多様な視点やアイデアは、チームの生産性向上やイノベーション創出に不可欠であり、ネットワークエンジニアの現場でもその価値が認識されています。

ワークライフバランスを重視した働き方

情報通信業では、厚生労働省のデータが示すように、他産業に比べて働き方改革が比較的速いペースで進んでいます。これにより、ネットワークエンジニアのワークライフバランスも大きく改善されつつあります。

残業時間の減少傾向に加え、テレワークやハイブリッドワークの普及は、働く場所や時間の柔軟性を向上させました。これにより、通勤時間の削減、家庭との両立、自己啓発や趣味の時間の確保がしやすくなり、エンジニア個人のQOL（生活の質）向上に貢献しています。

企業側も、従業員のワークライフバランスを重視することが、優秀な人材の確保と定着に繋がるという認識を深めています。従業員が心身ともに健康で充実した生活を送れる環境を整えることは、結果的に企業の生産性向上にも寄与します。

ネットワークエンジニアは、自身のスキルを活かして、このような柔軟で多様な働き方を実現しやすい職種であると言えるでしょう。

ネットワークエンジニアとして活躍するためのヒント

継続的な学習とスキルアップの重要性

IT業界の技術進化は非常に早く、ネットワーク分野も例外ではありません。数年前の常識が今日には古くなることも珍しくありません。

そのため、ネットワークエンジニアとして第一線で活躍し続けるためには、継続的な学習とスキルアップが不可欠です。クラウドコンピューティング（AWS, Azure, GCP）、SDN（Software-Defined Networking）、ネットワーク仮想化、IoT（Internet of Things）、そして高度なサイバーセキュリティ対策など、常に新しい技術やトレンドが登場しています。

これらをキャッチアップし、自身のスキルセットを更新し続けることが、長期的なキャリア形成には欠かせません。オンライン学習プラットフォームの活用、業界セミナーへの参加、技術コミュニティでの情報交換、そして認定資格の取得などを通じて、積極的に学習の機会を持つことが成功への鍵となります。

新しい技術への好奇心と探究心を持ち続けることが、ネットワークエンジニアとしての成長を促します。

コミュニケーション能力とプロジェクトマネジメント

ネットワークエンジニアは、単に技術的な知識やスキルがあれば良いというわけではありません。

プロジェクトを円滑に進めるためには、顧客やチームメンバー、他部門との円滑なコミュニケーション能力が非常に重要です。顧客の要件を正確にヒアリングし、技術的な内容を非技術者にも分かりやすく説明する能力は、プロジェクトの成否を左右します。

厚生労働省が長時間労働の原因として「関係者のコミュニケーション不足」を指摘していることからも、適切な情報共有と連携がいかに重要であるかが分かります。プロジェクトマネジメントの知識や経験も、大規模なネットワーク構築プロジェクトでは必須となります。

具体的には、進捗管理、リスク管理、リソース配分、そしてチームメンバーのモチベーション管理といったスキルが求められます。技術力と並行して、これらのヒューマンスキルやマネジメントスキルを磨くことが、キャリアアップに直結するでしょう。

最新技術トレンドへの対応と専門性の追求

現代のネットワークエンジニアには、最新の技術トレンドへの対応力が強く求められます。

特に、オンプレミスからクラウドへの移行が進む中で、AWSやAzureといったクラウド環境におけるネットワーク設計・構築のスキルは、もはや必須と言っても過言ではありません。クラウドサービス特有のネットワーク構成やセキュリティ対策、自動化技術（IaC）などを習得することで、自身の市場価値を飛躍的に高めることができます。

また、サイバーセキュリティの脅威が増大する現代において、セキュリティ分野に特化した専門性を追求する道も非常に有望です。ファイアウォール、IDS/IPS、SIEMといったセキュリティ製品の深い知識や、最新の攻撃手法とその対策に関する知見は、今後ますます需要が高まるでしょう。

自身が最も興味を持てる分野を見つけ、その専門性を深く掘り下げることで、替えのきかないネットワークエンジニアとして、社会に大きな価値を提供し続けることができるはずです。

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