IT業界には多種多様なエンジニア職種が存在し、「ネットワークエンジニア」もその一つとして、企業のITインフラを支える重要な役割を担っています。

しかし、「Webエンジニア」「サーバーエンジニア」「インフラエンジニア」「システムエンジニア(SE)」「クラウドエンジニア」など、似たような名称の職種が多く、それぞれの違いを正確に理解するのは難しいかもしれません。

本記事では、公的機関の情報に基づき、ネットワークエンジニアの業務内容と、他のITエンジニア職種との違いを明確に解説します。さらに、その将来性や年収の展望についても深掘りしていきます。

  1. ネットワークエンジニアの役割と仕事内容
    1. ネットワークの「要件定義と設計」
    2. ネットワークの「構築と導入」
    3. ネットワークの「運用と保守」
  2. ネットワークエンジニアとWebエンジニア、何が違う?
    1. 専門領域の根本的な違い
    2. 担う役割と技術スタック
    3. 連携と分業の重要性
  3. ネットワークエンジニアとサーバーエンジニア、どっちが向いてる?
    1. それぞれの役割分担
    2. 必要なスキルとキャリアパス
    3. 連携が生み出す安定稼働
  4. ネットワークエンジニアとインフラ・システム・クラウドエンジニアとの関係性
    1. インフラエンジニアとの関係性
    2. システムエンジニア(SE)との関係性
    3. クラウドエンジニアとの関係性
  5. ネットワークエンジニアの需要と将来性、年収の展望
    1. 高まるネットワークの重要性とDX推進
    2. クラウド化とSDN/NFVによる変化
    3. 年収とキャリアアップの展望
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: ネットワークエンジニアの主な仕事内容は何ですか?
    2. Q: ネットワークエンジニアとWebエンジニアの決定的な違いは何ですか?
    3. Q: サーバーエンジニアとネットワークエンジニアはどのように異なりますか?
    4. Q: インフラエンジニアという括りの中で、ネットワークエンジニアはどのような位置づけですか?
    5. Q: クラウドエンジニアとネットワークエンジニアの関わりはありますか?

ネットワークエンジニアの役割と仕事内容

ネットワークエンジニアは、企業や組織内のコンピューターネットワークシステムを設計、構築、運用、保守する専門職です。

PCやサーバー、各種デバイスなどが、セキュアかつ効率的に情報をやり取りできる環境を整備することを主な目的としています。

ネットワークの「要件定義と設計」

ネットワークエンジニアの仕事は、まず顧客や組織のニーズを詳細にヒアリングし、どのようなネットワークが必要とされているのかを明確にすることから始まります。

この段階では、単に通信ができるようにするだけでなく、将来的なデータ量の増加、ユーザー数の変動、セキュリティ要件、コスト効率なども考慮に入れる必要があります。

具体的には、IPアドレスの割り当て計画、ルーティングプロトコルの選定、VLAN(Virtual LAN)によるネットワーク分割、ファイアウォールやVPNによるセキュリティ対策、冗長化設計などを検討し、ネットワーク構成図として具体化します。

この設計フェーズは、ネットワークの安定性と拡張性を左右する非常に重要な工程であり、高度な専門知識と先見性が求められます。

参考情報にもある通り、顧客の要望に基づき最適なネットワーク構成を「設計」することが、ネットワークエンジニアの最初の大きな役割です。

ネットワークの「構築と導入」

設計が完了すると、次にその設計に基づいて実際にネットワークシステムを「構築」する段階に入ります。

このフェーズでは、ルーター、スイッチ、ファイアウォールといった多岐にわたるネットワーク機器を選定し、物理的にラックに設置してケーブルを配線する作業から、それぞれの機器にOSをインストールし、詳細な設定を行う作業までが含まれます。

例えば、ルーティングテーブルの構成、VLANのポート割り当て、アクセスリストの設定、VPNトンネルの確立、無線LANコントローラーの設定など、多岐にわたる技術的な設定が必要です。

構築作業は、設計図通りに正確かつ効率的に進める必要があり、設定ミス一つでシステム全体の稼働に影響を及ぼす可能性があるため、細心の注意が払われます。

実際に機器を導入し、設定を施すことで、計画されたネットワークが現実のものとなります。

ネットワークの「運用と保守」

ネットワークが稼働を開始した後も、ネットワークエンジニアの仕事は続きます。この「運用・保守」フェーズは、構築されたネットワークが常に安定して稼働し続けることを保証するために不可欠です。

主な業務内容としては、ネットワーク機器や通信状況の常時監視、障害発生時の迅速な特定と復旧作業、パフォーマンスのボトルネック分析と改善、定期的なメンテナンス(機器のファームウェアアップデートや設定見直し)などが挙げられます。

また、サイバー攻撃の脅威からネットワークを守るため、セキュリティパッチの適用や不正アクセス監視、ログ分析による異常検知も重要な役割です。

24時間365日の対応が求められることもあり、時には緊急のトラブルシューティングが必要となるため、冷静な判断力と高い問題解決能力が求められます。

ネットワークの安定稼働を維持することで、企業のビジネス活動が円滑に進む基盤を提供します。

ネットワークエンジニアとWebエンジニア、何が違う?

IT業界には「Webエンジニア」という職種も存在し、どちらもITの専門家ですが、その専門領域は大きく異なります。

それぞれの役割を理解することで、より明確なキャリアパスが見えてくるでしょう。

専門領域の根本的な違い

ネットワークエンジニアの専門は、データがどのように「伝送」されるか、その通信基盤そのものにあります。

ルーターやスイッチといった物理的な機器、TCP/IPなどの通信プロトコル、そしてネットワーク全体の接続性やセキュリティを設計・構築・運用することが主な業務です。

対してWebエンジニアは、インターネット上で動作するWebサイトやWebアプリケーションを「開発」することに特化しています。

ユーザーが目にする画面(フロントエンド)や、サーバー側でのデータ処理やデータベース連携(バックエンド)を担当し、Webサービスそのものの機能や使いやすさを追求します。

参考情報にもあるように、ネットワークエンジニアがインフラ全体を支えるのに対し、WebエンジニアはWebサービスそのものの開発に特化している点が、両者の根本的な違いです。

担う役割と技術スタック

ネットワークエンジニアが扱う技術は、ルーティングプロトコル(OSPF, BGPなど)、スイッチング技術(VLAN, STPなど)、ファイアウォール、VPN、SDN(Software-Defined Networking)といった、ネットワーク通信に直接関わるものが中心です。

CiscoやJuniperなどの特定のネットワーク機器ベンダー製品に関する深い知識も求められます。

一方、Webエンジニアの技術スタックは非常に多様です。

フロントエンドではHTML, CSS, JavaScriptに加え、ReactやVue.jsといったモダンなフレームワークを使用します。バックエンドではPython, Ruby, PHP, Java, Node.jsなどのプログラミング言語と、Django, Ruby on Rails, Laravelなどのフレームワーク、さらにはデータベース(MySQL, PostgreSQL)の知識が不可欠です。

Webエンジニアは、ユーザーが直接触れるアプリケーションの開発に重点を置くため、使用する技術もそれに特化しています。

連携と分業の重要性

Webサービスは、安定したネットワーク基盤がなければ機能しません。そのため、ネットワークエンジニアとWebエンジニアは密接に連携し、それぞれの専門性を活かして分業することが重要です。

ネットワークエンジニアが高速でセキュアな通信環境を提供することで、Webエンジニアはその上で快適に動作するWebアプリケーションを開発できます。

例えば、Webサイトの応答速度が低下した場合、ネットワークの帯域不足が原因なのか、あるいはWebアプリケーションの処理負荷が高いのかを切り分けるには、両者の専門知識が不可欠です。

問題発生時には、お互いの知識を共有し、協力して原因を特定し解決に導くことで、サービス全体の品質を維持向上させることができます。

ITシステム全体を円滑に機能させるためには、異なる専門性を持つエンジニア間の連携が極めて重要となります。

ネットワークエンジニアとサーバーエンジニア、どっちが向いてる?

ネットワークエンジニアと並んで、ITインフラを支える重要な職種に「サーバーエンジニア」があります。

どちらもインフラ関連のエンジニアですが、担当する領域には明確な違いがあります。

それぞれの役割分担

ネットワークエンジニアは、主にコンピュータ間の「通信経路」、すなわちネットワークインフラの設計、構築、運用、保守を専門とします。

データがどのようにルーターやスイッチを介して送受信されるか、その効率性やセキュリティを担保する役割です。

対してサーバーエンジニアは、ITサービスの基盤となる「サーバー本体」の設計、構築、運用、保守を専門とします。

具体的には、OSのインストールと設定、ミドルウェア(Webサーバー、データベースサーバーなど)の導入、ストレージの管理、仮想化環境の構築など、サーバーが適切に機能し、アプリケーションが安定して動作するための環境を整えます。

参考情報にあるように、ネットワークエンジニアはサーバー間の通信を担い、サーバーエンジニアはサーバー自体の機能や性能を確保する役割を担います。

必要なスキルとキャリアパス

ネットワークエンジニアには、TCP/IP、ルーティング、スイッチングといったネットワークプロトコルに関する深い知識が必須です。

Cisco CCNPやCCNAなどのベンダー資格、Linuxの基礎知識なども役立ちます。キャリアパスとしては、より高度なネットワークアーキテクトやセキュリティエンジニア、クラウドネットワークの専門家などが考えられます。

一方、サーバーエンジニアには、LinuxやWindows ServerといったOSの深い知識、仮想化技術(VMware, Hyper-V)、データベース(MySQL, PostgreSQL)、Webサーバー(Apache, Nginx)やアプリケーションサーバーの構築・運用スキルが求められます。

LPICやMicrosoft認定資格などがキャリアに有利に働くでしょう。サーバーエンジニアのキャリアパスは、データベースエンジニア、クラウドエンジニア、あるいはDevOpsエンジニアなど多岐にわたります。

どちらの職種も、最終的にはより広範なインフラ全体を統括するインフラエンジニアやITコンサルタントを目指すことが可能です。

連携が生み出す安定稼働

ネットワークとサーバーは、ITシステムにおいて車の両輪のような関係にあります。サーバーがどんなに高性能であっても、ネットワークが不安定であればデータは届かず、サービスは提供できません。

逆に、ネットワークが整備されていても、サーバーに問題があればやはりサービスは止まってしまいます。

両者の密な連携は、システムの安定稼働とパフォーマンス最大化のために不可欠です。例えば、Webサイトのレスポンスが遅い場合、ネットワークエンジニアは通信経路の問題を調査し、サーバーエンジニアはサーバー側の負荷やアプリケーションの問題を調査します。

お互いの専門知識を理解し、協力し合うことで、迅速かつ的確な問題解決が可能となり、高品質なITサービス提供へと繋がります。

それぞれの専門性を尊重しつつ、全体最適を考えて協働することが、ITインフラの健全な運用には欠かせないのです。

ネットワークエンジニアとインフラ・システム・クラウドエンジニアとの関係性

IT業界には、ネットワークエンジニア以外にも「インフラエンジニア」「システムエンジニア」「クラウドエンジニア」といった、似て非なる職種が存在します。

それぞれの職種との関係性を理解することで、ネットワークエンジニアの立ち位置がより明確になります。

インフラエンジニアとの関係性

「インフラエンジニア」という言葉は、ITインフラ全般を扱う職種を指す、非常に広い概念です。

サーバー、ネットワーク、データベース、ストレージ、仮想化基盤など、ITシステムを支える土台となるあらゆる要素の設計、構築、運用、保守を担当します。

この大きな枠組みの中に、特定の専門領域に特化した職種として、ネットワークエンジニアやサーバーエンジニアが含まれると考えることができます。

つまり、ネットワークエンジニアは「ネットワーク」という特定の分野に特化したインフラエンジニアの一種であり、インフラエンジニア全体の一部を構成する存在です。

参考情報にも明記されているように、ネットワークエンジニアはインフラエンジニアという大きな枠組みに含まれる専門職種と言えます。

より大きな組織ではインフラエンジニアが各専門領域を統括し、その下でネットワークエンジニアがネットワークの専門業務を行うケースが多く見られます。

システムエンジニア(SE)との関係性

システムエンジニア(SE)は、顧客の要望をヒアリングし、ITシステム全体の企画、要件定義、設計、開発の管理、テスト、そして運用保守まで、システム開発における非常に幅広い工程を担当する職種です。

SEはシステムの全体像を描き、プロジェクトを円滑に進めるための「指揮官」のような役割を担います。

一方でネットワークエンジニアは、SEが全体設計したシステム要件のうち、ネットワークに関する部分の具体的な設計、構築、運用を専門的に担当する「実行部隊」に近い存在です。

例えば、SEが「このシステムは月間100万PVに耐えうる安定したWebサービスであるべきだ」と要件定義した場合、ネットワークエンジニアはその要件を満たすためのネットワーク構成や帯域設計、セキュリティ対策などを具体的に検討し、実現します。

参考情報でも指摘されている通り、ネットワークエンジニアはSEが設計したシステム全体のネットワーク部分を担当する専門職と捉えることができます。

SEがシステム全体を俯瞰し、ネットワークエンジニアはネットワークという専門領域を深く担当することで、協力して一つのシステムを完成させます。

クラウドエンジニアとの関係性

「クラウドエンジニア」は、近年急速に需要が高まっている職種で、AWS (Amazon Web Services)、Azure (Microsoft Azure)、GCP (Google Cloud Platform)といったパブリッククラウドサービスを活用し、企業のITインフラの設計、構築、運用を担います。

クラウド環境では、物理的なサーバーやネットワーク機器を直接管理する代わりに、仮想化されたリソースをソフトウェアで定義・管理します。

ネットワークエンジニアも、クラウド環境におけるVPC(Virtual Private Cloud)やVNet(Virtual Network)といった仮想ネットワークの設計、ルーティング、ファイアウォール設定などを担当することが増えており、クラウドに関する知識が不可欠になっています。

しかし、クラウドエンジニアはネットワークだけでなく、仮想サーバー、データベース、ストレージ、さらにはコンテナ技術(Docker, Kubernetes)やDevOpsツールなど、クラウドサービス全体を包括的に扱うのが特徴です。

総務省の「令和4年通信利用動向調査」によると、2022年には全体の70%を超える企業がクラウドサービスを利用しており、クラウド化はITインフラの標準となりつつあります(出典: 総務省)。

この流れの中で、ネットワークエンジニアもクラウド環境に特化したネットワークスキルを習得し、クラウドエンジニアと密接に連携することが求められています。

ネットワークエンジニアの需要と将来性、年収の展望

IT技術の進化は止まることを知らず、それに伴いネットワークエンジニアの役割も変化し続けています。

需要の高まりや、今後の技術トレンド、そして年収の展望について見ていきましょう。

高まるネットワークの重要性とDX推進

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速により、多くの企業がビジネスの中心をデジタルへと移行しています。

IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ビッグデータ解析、5G通信といった最新技術の活用は、ビジネスの効率化や新たな価値創造に不可欠です。

これらの技術は、すべて高速かつ安定したネットワーク基盤の上に成り立っています。

例えば、IoTデバイスから収集される膨大なデータをリアルタイムで処理するためには、低遅延で高帯域なネットワークが必須です。

また、サイバーセキュリティの脅威が日々増大する中で、不正アクセスや情報漏洩から企業を守るためには、強固なセキュリティ機能を備えたネットワークの設計・運用が不可欠です。

このような背景から、ネットワークエンジニアは企業のIT戦略を支える要として、今後も高い需要が続くでしょう。

クラウド化とSDN/NFVによる変化

ITインフラのクラウド化は、ネットワークエンジニアの働き方や求められるスキルに大きな変化をもたらしています。

物理的な機器の設置や配線といった作業から、AWS、Azure、GCPといったクラウドプラットフォーム上での仮想ネットワークの設計、設定、管理へと業務の中心が移行しつつあります。

総務省の情報通信白書によると、2023年のパブリッククラウドサービス市場は3兆1,355億円(前年比25.8%増)に達し、今後も急成長が予測されています(出典: 総務省)。

これに伴い、ネットワークエンジニアにはクラウドサービス特有のネットワーク構成(VPC, VPN Gatewayなど)や、IaC(Infrastructure as Code)による自動化スキルが求められるようになります。

さらに、SDN(Software-Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)といったソフトウェアでネットワークを制御する技術の普及により、従来のハードウェア依存のスキルだけでなく、プログラミングや自動化ツールに関する知識も重要性を増しています。

これらの新しい技術を習得し、変化に対応できるネットワークエンジニアが、これからの時代に求められる人材となるでしょう。

年収とキャリアアップの展望

ネットワークエンジニアの年収は、経験年数、スキルセット、担当するプロジェクトの規模、企業の業種や所在地によって大きく異なります。

しかし、高度な専門知識と実務経験が豊富なネットワークエンジニアは、一般的に高い年収を得る傾向にあります。

特に、セキュリティ分野(ファイアウォール、IDS/IPSなど)や、クラウドネットワークの構築・運用SDN/NFVなどの最新技術に精通したエンジニアは市場価値が高く、より高額な報酬が期待できます。

キャリアアップとしては、以下のようなパスが考えられます。

  • 高度なネットワークアーキテクト: 大規模かつ複雑なネットワークの設計を主導する専門家。
  • セキュリティエンジニア: ネットワークセキュリティに特化し、サイバー攻撃からシステムを守る専門家。
  • クラウドエンジニア: クラウド環境でのネットワーク構築を含め、クラウドインフラ全般を扱う専門家。
  • ITコンサルタント: 顧客企業のIT戦略全体を支援し、ネットワークを含むITインフラの最適化を提案。
  • プロジェクトマネージャー: ネットワーク関連プロジェクトの計画、実行、管理を統括。

厚生労働省の職業情報提供サイトにおいても、「システムエンジニア(基盤システム)」の業務内容として、サーバー設置、OSインストールに加え、ストレージやネットワーク設定が挙げられており、ITインフラの根幹を支える重要なスキルとして認識されています(出典: 厚生労働省)。

継続的な学習とスキルアップを通じて、ネットワークエンジニアは多様なキャリアパスを描き、自身の市場価値を高めることが可能です。