バックエンドエンジニアとは?仕事内容から種類まで徹底解説

Webサービスやアプリケーションが日々進化する現代において、私たちの目に触れない裏側でシステムを支える重要な役割を担うのが、バックエンドエンジニアです。

この記事では、公的機関の情報に基づき、バックエンドエンジニアの具体的な仕事内容からその種類、関連職種との違い、さらには将来性や必要なスキルセットまで、徹底的に解説していきます。

「バックエンドエンジニアってどんな仕事?」という疑問をお持ちの方から、キャリアアップを目指す方まで、ぜひ参考にしてください。

  1. バックエンドエンジニアの仕事内容を具体的に解説
    1. システムの全体設計からプログラム開発まで
    2. サーバー・データベースの構築と管理
    3. 安定稼働を支える保守・運用業務
  2. バックエンドエンジニアができること:サーバーサイドの役割
    1. ユーザー体験を支える裏側の処理
    2. 広がる業務範囲と種類
    3. 高まる需要と将来性
  3. バックエンドエンジニアの職種と種類、別名について
    1. 呼称の違いと専門分野
    2. キャリアパスとスキルセットの進化
    3. 働き方と雇用形態
  4. プログラマーとの違いは?バックエンドエンジニアの立ち位置
    1. プログラマーとエンジニアの役割分担
    2. システム開発における全体像の中での立ち位置
    3. 求められるスキルセットの違い
  5. データベース、データエンジニア、データサイエンティストとの関連性
    1. バックエンドエンジニアにとってのデータベース知識の重要性
    2. データエンジニアとの協業
    3. データサイエンティストとの間接的な連携
  6. バックエンドエンジニアの平均年収と将来性
    1. 平均年収と賃金構造
    2. IT人材の需要と将来性
    3. 労働環境とキャリアパス
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. Q: バックエンドエンジニアは具体的にどのような仕事をするのですか?
    2. Q: バックエンドエンジニアができることの範囲は広いですか?
    3. Q: バックエンドエンジニアの職種にはどのような種類がありますか?
    4. Q: バックエンドエンジニアとプログラマーは同じ仕事ですか?
    5. Q: バックエンドエンジニアとデータベースエンジニア、データエンジニア、データサイエンティストの違いは何ですか?

バックエンドエンジニアの仕事内容を具体的に解説

バックエンドエンジニアは、WebサービスやWebアプリケーションなどのシステムの「裏側」、すなわちユーザーの目に触れないサーバーサイド全般の業務を担当します。その業務は多岐にわたり、サービスの安定稼働と効率的な運用に不可欠です。

システムの全体設計からプログラム開発まで

バックエンドエンジニアの仕事は、まずシステムの「要件定義」から始まります。どのような機能が必要か、どのようなデータ構造にするかといった、サービスの骨格を決定する非常に重要な工程です。この要件定義に基づき、システム全体のアーキテクチャ設計を行います。

設計が固まったら、いよいよプログラミング言語を用いた開発作業に入ります。Go、Python、C#、Javaなど、プロジェクトの特性や要件に応じた最適な言語を選定し、データベースとの連携、ビジネスロジックの実装、API(Application Programming Interface)の構築などを進めます。例えば、ユーザーがWebサイトで商品を購入する際、購入履歴をデータベースに保存したり、支払い処理を行ったりといった一連の裏側での処理は、すべてバックエンドエンジニアが開発したプログラムによって実行されます。

単にコードを書くだけでなく、将来的な拡張性や保守性を考慮した設計、そして効率的なコードの実装が求められるため、論理的思考力と高い技術力が不可欠な業務と言えるでしょう。

サーバー・データベースの構築と管理

システムを動かすためには、その土台となるサーバーと、データを保管するデータベースの存在が不可欠です。バックエンドエンジニアは、これらの構築と管理も重要な仕事として担います。

サーバー構築においては、システムの要件に合わせたハードウェアの選定から、OSやアプリケーションのインストール、設定までを行います。近年では、物理サーバーだけでなく、AWS (Amazon Web Services) や Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) といったクラウド環境での開発が主流となっており、これらのクラウドサービスの知識も必須となっています。クラウド環境を活用することで、サーバーの拡張や管理が柔軟に行えるメリットがあります。

また、データベース構築では、最適なデータベース管理システム(RDBMS: Relational Database Management System)を選定し、テーブル構成、データ構造、各テーブルの関係性などを詳細に設計します。ユーザー情報、商品情報、注文履歴など、膨大なデータを効率的に管理し、高速に取得・保存できるような設計は、サービスのパフォーマンスを大きく左右します。バックエンドエンジニアは、これらのインフラ基盤が安定かつ効率的に稼働するよう、常に監視・管理する責任も負っています。

安定稼働を支える保守・運用業務

システムは一度リリースしたら終わりではありません。むしろ、リリース後の「保守・運用」こそが、サービスの品質を維持し、ユーザーに継続的な価値を提供するために最も重要なフェーズの一つです。

バックエンドエンジニアは、リリースされたシステムが安定して稼働するように、常にその状態を監視します。具体的には、発生したエラーや不具合への迅速な対応、定期的なメンテナンス作業、ユーザーニーズやビジネス要件の変化に伴う仕様変更への対応などが挙げられます。例えば、システムに脆弱性が見つかった場合にはセキュリティパッチを適用したり、アクセス数が増加した際にはサーバーの負荷分散設定を見直したりと、常に最適な状態を保つための調整を行います。

その他にも、万が一の事態に備えたデータのバックアップ、サーバー機器のメンテナンスやソフトウェアの定期的な更新なども重要な業務です。これらの地道な作業によって、ユーザーは常に快適にサービスを利用でき、企業はビジネスを安定して展開することが可能になります。バックエンドエンジニアは、まさにシステムの「縁の下の力持ち」として、サービスのライフサイクル全体を支える役割を担っています。

バックエンドエンジニアができること:サーバーサイドの役割

バックエンドエンジニアは、Webサービスやアプリケーションの根幹を支えるサーバーサイドにおいて、多岐にわたる重要な役割を担っています。彼らの仕事がなければ、ユーザーが目にする美しいフロントエンドも、期待通りの機能を発揮することはできません。

ユーザー体験を支える裏側の処理

ユーザーがWebサイトでボタンをクリックしたり、フォームにデータを入力して送信したりする際、そのリクエストはフロントエンドからバックエンドへと送られます。バックエンドエンジニアは、このリクエストを受け取り、以下のような様々な処理を行います。

  • ビジネスロジックの実行: 例えば、商品の在庫確認、注文処理、ポイント計算など、サービスの核となる機能を実現します。
  • データの保存・取得: ユーザー情報、商品データ、注文履歴などをデータベースから取得したり、新しく保存したりします。これにより、ユーザーは過去の情報を参照したり、継続的にサービスを利用したりできます。
  • セキュリティ対策: ユーザー認証・認可システムの構築や、不正アクセス、データ漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を講じます。これにより、ユーザーは安心してサービスを利用できます。

これらの処理が高速かつ正確に行われることで、ユーザーはスムーズで快適な体験を得ることができます。バックエンドエンジニアは、サービスの信頼性、安定性、そして将来的なスケーラビリティ(拡張性)を担保する上で不可欠な存在と言えるでしょう。

広がる業務範囲と種類

「バックエンドエンジニア」という呼称は、一般的にサーバーサイド全般を担当するエンジニアを指しますが、その業務範囲は非常に広範です。そのため、担当する領域によってさらに細分化されることもあります。

「サーバーサイドエンジニア」とほぼ同義で使われることが多いですが、強いて区別するならば、サーバーサイドエンジニアの方がより広範なインフラ寄りの業務を含む場合もあります。例えば、単なるアプリケーション開発だけでなく、サーバーのOSレベルでのチューニングやネットワーク設計なども担当するケースです。

具体的な細分化としては、以下のような専門分野を持つエンジニアも存在します。

  • API開発エンジニア: 主に外部サービスとの連携や、フロントエンドとのデータ通信を行うAPIの設計・開発に特化します。
  • データベースエンジニア: データベースの設計、構築、パフォーマンスチューニング、セキュリティ管理に深い専門性を持つエンジニアです。
  • インフラエンジニア: サーバー、ネットワーク、クラウド環境などの基盤構築・運用に特化しますが、大規模なシステムではバックエンドエンジニアとの協業が不可欠です。

このように、バックエンドエンジニアの業務は非常に幅広く、自身の専門性を深めることで、特定の分野のエキスパートとして活躍することも可能です。

高まる需要と将来性

現代社会におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は、企業活動のあらゆる側面でIT技術の活用を加速させています。これにより、IT人材、特にシステムの根幹を担うバックエンドエンジニアへの需要は、ますます高まる一方です。

経済産業省の推計によると、2030年までにIT人材は最大80万人程度不足すると予測されており、この人材不足はIT業界全体にとって喫緊の課題となっています。このような状況下で、クラウド、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)といった先端技術分野での需要は特に顕著です。これらの技術を活用した新しいサービスやシステムの開発には、確かなバックエンドの技術力を持つエンジニアが不可欠だからです。

バックエンドエンジニアは、あらゆるWebサービスやアプリケーションの基盤を構築・運用する役割を担っているため、需要がなくなることは考えにくいでしょう。常に新しい技術を学び、自身のスキルセットを更新し続けることで、将来にわたって安定したキャリアを築くことが可能です。また、技術の進化に伴い、より高度な問題解決能力や設計能力が求められるようになり、専門性の高いエンジニアほど高い評価と報酬を得られる傾向にあります。

バックエンドエンジニアの職種と種類、別名について

バックエンドエンジニアという職種は、その専門性とカバーする範囲の広さから、様々な呼び方をされたり、他のエンジニア職種と密接に関連したりしています。ここでは、その多様な側面について解説します。

呼称の違いと専門分野

バックエンドエンジニアは、その業務内容からいくつかの別名や関連する呼称を持っています。最も一般的で、ほぼ同義として使われるのが「サーバーサイドエンジニア」です。これは、ユーザーの目に触れるフロントエンドに対して、サーバー側(バックエンド)の処理全般を担当するという意味合いが強く、非常に近い職種と言えます。

また、Webサービスやアプリケーションの開発に特化していることから、「Webエンジニア」や「アプリケーションエンジニア」と呼ばれることもあります。これらの呼称は、フロントエンド開発者も含む場合もありますが、多くの場合、バックエンド開発に強みを持つエンジニアを指すことが少なくありません。

さらに、特定の技術領域に特化した場合、例えば「APIエンジニア」や「データベースエンジニア」と呼ばれることもあります。最近では、フロントエンドからバックエンド、インフラまで幅広く対応できる「フルスタックエンジニア」への関心も高まっていますが、深い専門性を追求するバックエンドエンジニアの需要は依然として高いです。

これらの呼称の違いは、企業の開発体制やプロジェクトの規模、あるいは個人の専門性によって使い分けられることが多く、バックエンドエンジニアとしての基本的なスキルセットは共通している場合がほとんどです。

キャリアパスとスキルセットの進化

バックエンドエンジニアとしてのキャリアパスは多岐にわたり、自身の興味や目標に応じて様々な方向へ進化することが可能です。基本的なプログラミング言語の習得はもちろんのこと、より専門性の高いスキルや知識を習得することが、キャリアアップの鍵となります。

例えば、より大規模なシステムを設計・構築するための「アーキテクト」としての道、あるいはチームを率いてプロジェクトを成功に導く「テックリード」や「プロジェクトマネージャー」としての道があります。また、特定の技術(例えば、分散システム、マイクロサービス、機械学習基盤など)のエキスパートとして、高い専門性を追求する「スペシャリスト」としてのキャリアも魅力的です。

スキルセットの面では、Go、Python、Java、C#などのプログラミング言語に加え、以下のような技術の習得が推奨されます。

  • クラウド技術: AWS、Azure、GCPなどのIaaS/PaaS(Infrastructure as a Service / Platform as a Service)を活用したインフラ構築・運用能力。
  • フレームワーク: Spring Boot (Java)、Django/Flask (Python)、Laravel (PHP) など、開発効率を高めるためのフレームワークの知識。
  • データベース: RDBMS(MySQL, PostgreSQLなど)だけでなく、NoSQL(MongoDB, Redisなど)に関する知識。
  • コンテナ技術: DockerやKubernetesなど、アプリケーションのポータビリティとスケーラビリティを高める技術。
  • システム設計: マイクロサービスアーキテクチャ、RESTful API設計などの知識。

常に新しい技術トレンドを追いかけ、学習を続ける姿勢が、バックエンドエンジニアとしての価値を高める上で非常に重要です。

働き方と雇用形態

バックエンドエンジニアの働き方は、所属する企業やプロジェクトによって多様ですが、雇用形態については、参考情報にもある通り、ほとんどが正社員です。

これは、システムの根幹を担う重要な業務であるため、顧客との守秘義務やトラブル発生時の責任の所在を明確にする必要があり、継続的な関与が求められるためです。また、システム全体を理解し、長期的な視点で改善していくためには、深い知識と経験が必要となるため、企業側も安定した雇用を求める傾向にあります。

正社員以外の雇用形態としては、フリーランスとしてプロジェクト単位で契約するケースや、派遣社員として働くケースも存在します。特に、高い専門性や経験を持つベテランエンジニアであれば、フリーランスとして高単価で活躍する機会も増えています。しかし、駆け出しの段階では、チーム開発や大規模開発の経験を積むためにも、正社員としての勤務が一般的かつ推奨されます。

勤務先も、自社サービス開発企業、受託開発企業、客先常駐型のSES(System Engineering Service)企業など様々です。どの形態を選ぶかによって、仕事内容や働き方、そしてキャリアパスも大きく変わってくるため、自身の志向に合った選択をすることが大切です。

プログラマーとの違いは?バックエンドエンジニアの立ち位置

IT業界では様々な職種が存在し、それぞれの役割が細分化されています。特に「プログラマー」と「バックエンドエンジニア」は混同されがちですが、両者には明確な違いと、システム開発における異なる立ち位置があります。

プログラマーとエンジニアの役割分担

まず、プログラマーは主に、設計書や仕様書に基づいて「コードを書くこと」に特化した専門家です。与えられた要件や設計に従って、特定のプログラミング言語を用いてプログラムを実装し、それが正しく動作することを確認するのが主な役割となります。開発工程の中でも、コーディングと単体テストが中心となることが多いでしょう。

一方、バックエンドエンジニアは、より広範なシステム開発のライフサイクル全体に関与します。具体的には、システムの要件定義、全体設計、プログラミング、テスト、さらにはリリース後の保守・運用まで、一連のプロセスを担当します。単にコードを書くだけでなく、どのようなシステムを構築すべきか、どのような技術を選定すべきかといった上流工程の意思決定にも深く関わることが特徴です。

つまり、プログラマーが「どう作るか」という実装に重点を置くのに対し、バックエンドエンジニアは「何を作るか」「なぜ作るか」「どう設計するか」といった、より戦略的・全体的な視点からプロジェクトに貢献します。もちろん、バックエンドエンジニアも日常的にプログラミングを行いますが、その活動はより大きなシステム設計の一部として位置づけられます。

システム開発における全体像の中での立ち位置

バックエンドエンジニアは、システム開発プロジェクトにおいて、フロントエンドエンジニア、インフラエンジニア、プロジェクトマネージャーなど、他の職種と密接に連携しながら、サービスの「核」を構築する重要な立ち位置にいます。

例えば、ユーザーが直接操作する画面を開発するフロントエンドエンジニアは、バックエンドが提供するAPIを通じてデータをやり取りします。バックエンドエンジニアは、フロントエンドが求めるデータを効率的に提供できるよう、APIの設計やデータ構造を最適化する必要があります。また、サーバーやネットワークといった基盤を整備するインフラエンジニアとは、サーバーの負荷状況やデプロイ(システムを稼働させるための配置)方法について協力し合います。

さらに、ビジネス要件を技術的な仕様に落とし込む能力も求められます。ビジネスサイドの要求を理解し、それを技術的にどのように実現するかを検討し、最適なソリューションを提案することがバックエンドエンジニアの重要な役割です。サービスの根幹を担う存在として、開発チーム全体のハブとなり、技術的な実現可能性とビジネス目標の橋渡しをする役目も果たします。

求められるスキルセットの違い

プログラマーとバックエンドエンジニアでは、求められるスキルセットにも違いがあります。

プログラマーには、特定のプログラミング言語に関する深い知識と、正確で効率的なコーディング能力が最も重要視されます。アルゴリズムやデータ構造に関する理解も不可欠です。

一方、バックエンドエンジニアには、プログラミング能力に加え、より広範で体系的な知識が求められます。具体的には、以下のスキルが挙げられます。

  • システム設計能力: サービスの要件に基づき、堅牢でスケーラブルなシステムアーキテクチャを設計する能力。
  • データベース知識: データベースの設計、最適化、運用に関する深い知識(RDBMS, NoSQLなど)。
  • インフラ知識: サーバー、ネットワーク、OS、クラウドサービス(AWS, Azure, GCP)に関する基本的な理解。
  • セキュリティ知識: システムの脆弱性対策、認証・認可システムの設計、データ保護に関する知識。
  • 問題解決能力: システム障害発生時に、原因を特定し解決する能力。
  • コミュニケーション能力: フロントエンド、インフラ、ビジネスサイドなど、様々なステークホルダーと円滑に連携するための能力。

これらのスキルは、単にコードを書くだけでなく、システム全体を俯瞰し、複雑な問題を解決しながら、ビジネス価値を最大化するバックエンドエンジニアにとって不可欠なものです。

データベース、データエンジニア、データサイエンティストとの関連性

現代のITサービスにおいて、データは「新たな石油」とまで言われるほど重要な資産です。バックエンドエンジニアは、このデータを扱う上で、データベース、さらにはデータエンジニアやデータサイエンティストといった専門職と密接な関連を持っています。

バックエンドエンジニアにとってのデータベース知識の重要性

バックエンドエンジニアにとって、データベースの知識はまさに「必須科目」と言えるほど重要です。Webサービスやアプリケーションは、ユーザー情報、商品情報、注文履歴、コンテンツデータなど、様々な種類のデータを永続的に保存し、必要に応じて取り出したり更新したりする必要があります。

このデータの保管庫として機能するのがデータベースであり、バックエンドエンジニアは以下の点で深く関わります。

  • データベースの設計・構築: アプリケーションの要件に合わせて、最適なRDBMS(MySQL, PostgreSQL, Oracle Databaseなど)やNoSQLデータベース(MongoDB, Redis, DynamoDBなど)を選定し、テーブル構造やデータモデルを設計します。データの一貫性、整合性を保ち、効率的なデータアクセスを可能にする設計が求められます。
  • データの操作: プログラミング言語からSQL(Structured Query Language)などを用いて、データベースにデータを挿入、更新、削除、検索する処理を実装します。
  • パフォーマンスチューニング: 大量のデータや高頻度のアクセスに対応するため、クエリの最適化、インデックスの設計、キャッシュの活用などを行い、データベースのパフォーマンスを最大限に引き出します。

データがサービスの根幹である以上、バックエンドエンジニアがデータベースを深く理解し、適切に扱えることは、サービスの品質と信頼性を大きく左右するのです。

データエンジニアとの協業

データエンジニアは、近年特に需要が高まっている専門職で、主に大規模なデータの収集、加工、管理、分析基盤の構築を専門としています。バックエンドエンジニアが主にアプリケーションが利用するリアルタイムなトランザクションデータを扱うのに対し、データエンジニアはより広い範囲のデータ(ログデータ、センサーデータなど)を扱います。

バックエンドエンジニアとデータエンジニアは、異なる役割を持ちながらも密接に協業します。例えば、バックエンドエンジニアが開発したアプリケーションで生成されるログデータやイベントデータは、データエンジニアが構築したデータパイプラインを通じて収集され、データウェアハウスやデータレイクに保存されます。これにより、企業のビジネス分析や機械学習モデルのトレーニングに活用されるのです。

具体的な協業の例としては、以下が挙げられます。

  • データソースの提供: バックエンドエンジニアが、データエンジニアが分析に必要なデータをAPI経由で提供したり、データベースへのアクセス権を適切に管理したりします。
  • データフォーマットの調整: 両者がスムーズにデータを連携できるよう、データフォーマットやスキーマについて協議し、標準化を進めます。
  • データガバナンス: データの品質、セキュリティ、プライバシー保護など、データに関するガバナンス(管理体制)において協力します。

このように、バックエンドエンジニアは、データエンジニアが構築するデータ基盤の「川上」に位置し、良質なデータを提供することで、企業のデータ活用を強力に支援します。

データサイエンティストとの間接的な連携

データサイエンティストは、統計学や機械学習などの専門知識を駆使して、データを分析し、ビジネス上の課題解決や新たな価値創造を行う専門家です。彼らは、データエンジニアが整備した分析基盤上のデータを活用して、ユーザー行動の予測、レコメンデーションシステムの開発、市場トレンドの分析などを行います。

バックエンドエンジニアとデータサイエンティストの連携は、データエンジニアを介した間接的なものとなることが多いですが、その関係性は非常に重要です。バックエンドエンジニアが収集・管理するデータが、データサイエンティストの分析の「源泉」となるからです。

具体的な連携としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 分析ニーズへの対応: データサイエンティストが特定のデータポイントやログ情報の追加を求めた際、バックエンドエンジニアがアプリケーションの改修を行い、必要なデータが出力されるように実装します。
  • 分析結果のサービスへの組み込み: データサイエンティストが開発した機械学習モデルや分析結果を、実際にサービス機能としてユーザーに提供するために、バックエンドエンジニアがAPIを介して組み込みます。
  • A/Bテストの実装: データサイエンティストが考案した新機能のA/Bテストを、バックエンドエンジニアが実装し、データ収集の仕組みを構築します。

バックエンドエンジニアは、データがどのように生成され、どのように利用されるかを理解することで、データ活用の可能性を広げ、より価値の高いサービス提供に貢献することができます。

バックエンドエンジニアの平均年収と将来性

バックエンドエンジニアは専門性の高い職種であり、その需要の高さから、他の職種と比較しても高い年収が期待できます。また、IT技術の進化とともに、その将来性も非常に明るいと言えます。

平均年収と賃金構造

バックエンドエンジニアを含むITエンジニアの年収は、スキルや経験、担当する技術領域、企業規模などによって大きく変動しますが、一般的な傾向として高水準にあります。

厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、Webサイト開発のシステムエンジニア(バックエンドエンジニアを含む)の平均年収は550.2万円とされています。これは、国税庁の令和4年度データによる給与所得者全体の平均年収約458万円を大きく上回る金額です。

また、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2025年時点での正社員ITエンジニアの平均月収は約38.6万円、年収換算で約463.2万円となり、ボーナス等を含めると実質年収はさらに高くなる可能性があります。特に、クラウド、AI、データサイエンスといった先端技術に強みを持つエンジニアは、より高い報酬を得る傾向にあります。

以下に、参考情報を基にした平均年収の比較表を示します。

項目 平均年収/月収 出典
Webサイト開発SE(バックエンドエンジニア含む) 550.2万円 厚生労働省「jobtag」
給与所得者全体 約458万円 国税庁 令和4年度データ
正社員ITエンジニア(平均月収) 約38.6万円(年収換算約463.2万円) 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2025年時点)

※上記データは平均値であり、個々のスキル、経験、コミュニケーション能力などによって年収は変動します。

IT人材の需要と将来性

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、IT技術がビジネスのあらゆる側面で不可欠となる現代社会において、IT人材の需要を爆発的に押し上げています。バックエンドエンジニアは、その中心的な役割を担うため、非常に高い需要と明るい将来性が見込まれています。

経済産業省の推計によると、2030年までにIT人材は最大80万人程度不足すると予測されており、この人材不足はIT業界全体にとって深刻な課題です。特に、クラウド、AI、IoTといった先端技術分野でのバックエンドエンジニアの需要は非常に高く、これらの技術を扱える人材は市場で高く評価されています。新しい技術トレンドに対応できる柔軟性と学習意欲があれば、キャリアの選択肢は大きく広がるでしょう。

また、IT人材の労働市場に関する調査報告書(経済産業省・厚生労働省)によると、IT人材の需要は高く、賃金水準も他の産業と比較して高い傾向が継続しています。これは、IT技術が企業の競争力を左右する重要な要素となっているためであり、今後もこの傾向は続くと考えられます。

このような状況を背景に、バックエンドエンジニアは安定したキャリアを築きやすく、常に新しい技術を学び、スキルを向上させることで、自身の市場価値を高めることができる、非常に魅力的な職種と言えるでしょう。

労働環境とキャリアパス

ITエンジニアの労働時間については、過去に長時間労働が課題とされてきた側面もあります。厚生労働省の「働き方改革ハンドブック(情報通信業〈情報サービス業編〉)」によると、ITエンジニアの所定外労働時間は平均26.0時間とされています。また、所定外労働時間が月80時間を超えるITエンジニアがいる企業は65.3%に上るというデータもあります。特に、客先常駐しているエンジニアが多い企業ほど、長時間労働の傾向が見られると指摘されています。

しかし、2019年4月(中小企業は2020年4月)からは、時間外労働の上限規制が施行され、原則として月45時間、年360時間以内となりました。特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)が限度とされており、法的な労働環境の改善が進んでいます。企業側も、この規制を遵守し、エンジニアの働き方改革に取り組む動きが加速しています。

バックエンドエンジニアとしてのキャリアパスは、技術の専門性を深める「スペシャリスト」の道や、チームやプロジェクトを率いる「テックリード」「プロジェクトマネージャー」の道など、多様です。新しいスキルや知識の習得は常に重要であり、プログラミング言語の習得に加え、クラウド、フレームワーク、データベース、コンテナ技術など、幅広い技術を身につけることが、キャリアの可能性を広げる上で推奨されます。自己成長への投資が、将来のキャリア形成に直結する職種と言えるでしょう。