システムエンジニアのリアル：仕事の魅力と知られざる苦悩

システムエンジニアのリアル：仕事の魅力と知られざる苦悩

システムエンジニア（SE）という職業は、現代社会において不可欠なITシステムを支える重要な存在です。一見すると華やかで高収入のイメージがありますが、その裏には知られざる苦悩や課題も多く存在します。

本記事では、システムエンジニアの仕事の魅力から、日々直面する困難、そしてこれからのキャリアパスまで、そのリアルな姿を深掘りしていきます。現役SEの方も、これからSEを目指す方も、ぜひ最後までお読みください。

システムエンジニアってどんな仕事？向いている人とは

SEの仕事の広がりと役割

システムエンジニア（SE）の仕事は、単にプログラミングをするだけではありません。顧客の抱える課題を深く理解し、その解決のために最適な情報システムを「設計」し、「開発」していく専門職です。プロジェクトの初期段階である要件定義から始まり、どのようなシステムにするかを具体的に描く基本設計、さらにそれを実現するための詳細設計、そして実際の開発、テスト、運用、保守に至るまで、システムのライフサイクル全体に関わる重要な役割を担います。

例えば、ある企業の業務効率化を目的としたシステム開発では、まず経営層や現場の担当者からヒアリングを行い、現状の課題や求める機能、将来の展望などを徹底的に洗い出します。その上で、既存の業務フローやシステムの現状を分析し、どのような技術を使って、どのようなシステムを構築すれば、最も効果的に課題を解決できるかを提案し、設計図を描き上げていきます。

このように、SEは技術的な知識だけでなく、顧客のビジネスを理解し、コミュニケーションを通じてニーズを引き出す能力が求められる、非常に多角的で責任の大きな仕事だと言えるでしょう。

SEの仕事がもたらすやりがいと魅力

システムエンジニアの仕事には、多くの困難が伴う一方で、大きなやりがいと魅力が存在します。

まず挙げられるのは、複雑な問題を解決し、自身のアイデアや設計が形となって動くシステムを創り上げる「達成感と創造性」です。まるでパズルのピースを一つずつ埋めていくように、困難な課題をクリアし、最終的にシステムが顧客の期待通りに動作したときの喜びは、何物にも代えがたいものです。

また、IT技術は日進月歩であり、常に新しい知識やスキルを習得することで自身の市場価値を高めることができる「スキルアップの機会」が豊富にあります。自己成長を実感しながらキャリアを築ける点は、SEの大きな魅力でしょう。厚生労働省の「職業情報提供サイト（job tag）」によると、システムエンジニア（基盤システム）の転職市場の賃金相場は、ITSSレベルによって異なりますが、レベル1～2で420万円～620万円、レベル5以上で600万円～950万円とされており、スキルや実績に応じて高収入を得やすい職種でもあります。

さらに、現代社会においてITシステムは私たちの生活や経済活動に不可欠なインフラであり、自身の仕事が「社会や経済の発展に貢献している」という実感を得られることも、SEの大きなやりがいにつながります。

こんな人がSEに向いている！求められる素質

システムエンジニアの仕事には、特定の知識やスキルだけでなく、向き不向きがあります。では、どのような人がSEに向いているのでしょうか。

まず第一に、論理的思考力と問題解決能力が挙げられます。システム開発では、様々な問題やエラーに直面します。それらを冷静に分析し、原因を特定し、最適な解決策を導き出す能力は不可欠です。複雑な情報を整理し、筋道を立てて考えることが得意な人は、SEの仕事に強い適性があると言えるでしょう。

次に、強い学習意欲と探求心です。IT技術は常に進化し続けるため、一度覚えた知識やスキルだけで通用する世界ではありません。新しいプログラミング言語、フレームワーク、クラウド技術、AI、IoTといった先端技術など、常に最新情報をキャッチアップし、自ら学び続ける姿勢が求められます。技術を深く掘り下げることが好きな人は、この分野で大きく成長できるでしょう。

そして、意外に思われるかもしれませんが、コミュニケーション能力も非常に重要です。SEは顧客の要望を聞き取り、開発チームと連携し、時には非技術者にも分かりやすく説明する必要があります。円滑な人間関係を築き、明確に意図を伝えられる能力は、プロジェクトを成功に導く上で欠かせない素質です。一人で黙々と作業するだけでなく、チームで協力し、周囲と積極的に関われる人がSEとして活躍できるでしょう。

システムエンジニアの「あるある」：頭痛や病気との向き合い方

SEにつきまとう長時間労働の影

システムエンジニアの仕事には、華やかな面がある一方で、「長時間労働」という避けられない影がつきまといます。特にIT業界、その中でも情報サービス業においては、長時間労働が慢性化していることが課題として指摘されています。厚生労働省の「IT業界における働き方改革」によると、情報通信業は他の産業と比較して、長時間労働による過重な業務負荷が原因の労働災害が多いことが報告されており、その厳しい実態が浮き彫りになっています。

長時間労働の主な要因はいくつか考えられます。一つは、IT業界に特有の多重下請け構造です。これにより、元請けから下請けへと続く中で納期遅延やコスト削減のプレッシャーが増幅され、末端のエンジニアに過剰な業務負担がかかることがあります。

また、プロジェクト開始時の要求仕様が曖昧であったり、開発途中で頻繁な仕様変更が発生したりすることも、手戻り作業や作業時間の増加を招く大きな原因です。さらに、IT人材の需要が高いにもかかわらず供給が追いつかない「慢性的な人材不足」も、一人当たりの業務負担を増大させる要因となっています。そして、顧客先に常駐するエンジニアが多い企業ほど、所定外労働時間が月80時間を超える割合が高くなる傾向があるというデータもあります。

厚生労働省の「働き方改革ハンドブック（情報通信業〈情報サービス業編〉）」によると、ITエンジニアの所定外労働時間は平均26.0時間ですが、月80時間を超えるエンジニアがいる企業は実に65.3%に上ると報告されており、一部のエンジニアが非常に過酷な労働環境に置かれている現実を示しています。

心と体を蝕む精神的・肉体的ストレス

システムエンジニアの仕事は、長時間労働だけでなく、精神的・肉体的な負担も非常に大きいのが実情です。

精神的な負担の主な原因としては、まず「納期に追われるプレッシャー」が挙げられます。プロジェクトの遅延は許されず、常にタイトなスケジュールの中で成果を出すことが求められるため、強いストレスを感じるエンジニアは少なくありません。また、顧客からの急な「仕様変更への対応」や、開発の途中で予期せぬトラブルが発生した場合の「原因究明と解決」も、精神的な負荷を大きくします。顧客とのコミュニケーションや、社内外の調整役を担うことも多く、人間関係から生じるストレスも無視できません。

肉体的な負担については、長時間にわたるデスクワークが主な原因です。一日中PCの画面と向き合い、キーボードを叩き続けることで、肩こり、腰痛、眼精疲労、頭痛といった症状が慢性化することが多くあります。特に、睡眠不足や不規則な食生活が重なると、体調を崩しやすくなります。

さらに深刻なのは、長時間労働が引き起こす健康問題です。厚生労働省は、過労死の労災認定基準において、脳・心臓疾患の発症前1ヶ月間の時間外労働が100時間を超える場合や、発症前2～6ヶ月間の時間外労働が平均80時間を超える場合に、業務との関連性が強いと判断しています。SEの仕事は、こうした脳・心臓疾患や、精神障害といった深刻な健康問題につながるリスクも指摘されており、自身の心身の健康を管理することが非常に重要になります。

SEが直面する継続学習のプレッシャーとその乗り越え方

IT業界のシステムエンジニアにとって、常に新しい知識やスキルを習得し続ける「継続的な学習」は、避けて通れない課題であり、同時に大きなプレッシャーでもあります。

情報技術は日進月歩で進化しており、数年前の常識が今日には古くなることも珍しくありません。新しいプログラミング言語が登場し、クラウド技術は進化を続け、AI（人工知能）やIoT（モノのインターネット）といった先端分野が次々と実用化されています。加えて、サイバーセキュリティの脅威は常に変化しており、これら全てに対応するための最新の知識を身につける必要があります。

このため、SEは業務時間外に勉強会に参加したり、書籍やオンライン教材で学習したり、資格取得を目指したりと、自己投資を続けることが求められます。仕事で疲れている中で、さらに学習時間を確保することは、精神的にも肉体的にも大きな負担となることがあります。このプレッシャーから、燃え尽き症候群に陥ったり、キャリアの停滞を感じたりするエンジニアも少なくありません。

しかし、この継続的な学習は、単なるプレッシャーとして捉えるだけでなく、自己成長の機会と前向きに捉えることも可能です。新しい技術を習得することで、自身のスキルセットが広がり、市場価値が高まります。困難な課題を解決できる選択肢が増え、よりクリエイティブな仕事に挑戦できるようになります。学習のモチベーションを維持するためには、自分の興味のある分野から手をつけたり、仲間と一緒に勉強したり、学んだことをアウトプットする場を設けたりすることが有効です。また、企業側も研修制度の充実や学習時間の確保など、エンジニアの成長を支援する取り組みが求められています。

開発現場の課題：属人化やバグとの戦い

「あの人しかわからない」？属人化の構造とリスク

開発現場でよく直面する課題の一つに「属人化」があります。これは、特定の業務やシステムに関する知識、ノウハウ、スキルが、特定の個人に集中し、他のメンバーがその内容を十分に理解していない状態を指します。

属人化は、ベテランエンジニアが特定のシステムを長年担当することで自然発生することもありますし、プロジェクトのスケジュールが厳しく、ドキュメント作成や知識共有に十分な時間が割かれない状況で顕著になりやすい傾向があります。例えば、「このシステムのこの部分は、Aさんしか直せない」「あの機能の設計意図は、Bさんしか知らない」といった状況は、まさに属人化の典型です。

属人化が引き起こすリスクは多岐にわたります。最も深刻なのは、担当者が急に退職したり、病気で休んだりした場合に、業務が停滞したり、最悪の場合プロジェクトが停止してしまったりすることです。知識が共有されていないため、他のメンバーでは対応できず、システムの保守運用に支障をきたし、顧客に迷惑をかける事態に発展する可能性もあります。また、新しいメンバーがプロジェクトに参画した際も、既存の知識がないためにキャッチアップに時間がかかり、生産性が低下するという問題も発生します。

この課題を解決するためには、開発チーム全体で意識的に知識共有を進める必要があります。具体的には、詳細な設計書や仕様書の作成、コードレビューの徹底、ナレッジベースやFAQの整備、定期的な勉強会やペアプログラミングの実施などが有効です。また、チームメンバーの多能工化を進め、複数のメンバーが多様な業務に対応できるよう育成することも重要です。属人化を解消することで、プロジェクトの安定性やチーム全体の生産性向上につながります。

バグとの終わりなき戦い：品質を支えるSEの使命

システム開発において、バグ（不具合）は避けられない存在であり、システムエンジニアは常にバグとの終わりなき戦いを強いられます。バグとは、プログラムの誤りや設計上の欠陥によって、システムが期待通りに動作しない現象を指します。

バグがもたらす影響は甚大です。軽微なものであればユーザーの利便性を損なう程度で済みますが、深刻なバグはシステムのクラッシュやデータの破損、誤作動を引き起こし、企業の信頼失墜や莫大な経済的損失につながることもあります。例えば、金融システムのバグが誤った取引処理を生んだり、医療システムのバグが診断ミスにつながったりする可能性もゼロではありません。

SEの使命は、このようなバグを未然に防ぎ、発見し、そして徹底的に取り除くことにあります。そのためには、開発工程の各フェーズで品質を確保するための様々な取り組みが欠かせません。要件定義や設計の段階で潜在的な欠陥を見つけるためのレビューを徹底し、開発段階では単体テストや結合テストを繰り返し行い、システム全体を評価する総合テストを実施します。これらのテスト工程は、開発期間全体の大きな割合を占めることも珍しくありません。

しかし、どんなに完璧なテストを行っても、全てのバグを見つけ出すことは非常に困難です。そのため、リリース後も継続的にシステムの監視を行い、バグが発見された場合には迅速に修正し、再発防止策を講じる必要があります。SEは、技術的な知識だけでなく、細部にまで気を配る注意力、そして品質に対する強い責任感を持って、バグとの戦いに挑み、システムの信頼性と安全性を守り抜くことが求められます。

変わり続ける要求仕様への対応とコミュニケーションの壁

システム開発プロジェクトにおいて、多くのシステムエンジニアが頭を悩ませるのが、「変わり続ける要求仕様」への対応と、それに伴う「コミュニケーションの壁」です。

顧客は、開発の初期段階で完璧な要求を提示できるとは限りません。ビジネス環境の変化、市場のニーズ、競合他社の動向などによって、プロジェクトの途中で新しい機能の追加や既存機能の変更を求めることが頻繁に発生します。また、システム開発が進むにつれて、当初のイメージと具体的な実装とのギャップに気づき、仕様変更を依頼することも少なくありません。これらの仕様変更は、設計のやり直し、追加開発、テストの再実施といった「手戻り」作業を生み、プロジェクトの遅延やコスト増加の大きな原因となります。

このような状況をさらに複雑にするのが、コミュニケーションの難しさです。SEは技術的な専門用語を使いがちですが、顧客は必ずしもITに詳しいとは限りません。顧客が「こうしてほしい」と伝えた意図がSEに正しく伝わらなかったり、SEが「このように実装します」と説明した内容が顧客に理解されなかったりすると、認識の齟齬が生まれてしまいます。この認識のずれが、後々の仕様変更やトラブルの温床となるのです。

この課題を乗り越えるためには、SEは技術的なスキルだけでなく、高いコミュニケーション能力とビジネス理解力が求められます。顧客の真のニーズを引き出すためのヒアリング力、専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明するプレゼンテーション力、そして常に顧客と開発チームの間で円滑な情報共有を図る調整力が不可欠です。アジャイル開発手法のように、短いサイクルで開発とフィードバックを繰り返し、密にコミュニケーションを取ることで、仕様変更のリスクを低減し、顧客満足度を高める努力が常に求められます。

ビジネススキルとデザイン：SEが磨くべき能力

技術力だけじゃない！SEに求められるビジネス視点

システムエンジニアというと、高度なプログラミングスキルやインフラ知識といった技術力が最重要視されると思われがちです。しかし、現代のSEには、それらと並んで「ビジネス視点」が強く求められています。単に顧客の言われた通りにシステムを作るだけでなく、顧客のビジネスそのものを理解し、その成長に貢献できるシステムを提案・実現する能力が不可欠だからです。

例えば、顧客が「新しい会員管理システムが欲しい」と要望してきた際、SEは単に会員情報を登録・管理する機能を提供するだけでなく、「なぜ新しいシステムが必要なのか」「このシステムが導入されることで、顧客のビジネスにどのようなメリットが生まれるのか」「売上向上やコスト削減にどう貢献できるのか」といったビジネス的な視点から深く掘り下げて考える必要があります。

このようなビジネス視点を持つことで、SEはより本質的な課題解決につながる要件定義を行うことができます。顧客の言葉の裏にある真のニーズを汲み取り、時には顧客自身が気づいていない課題や、より良い解決策を提案することも可能になります。これにより、システムの導入効果を最大化し、顧客から真のパートナーとして信頼されるSEへと成長できるのです。

ビジネス視点を養うためには、業界知識を深める、経営に関する書籍を読む、顧客の事業戦略について積極的に質問する、といった努力が必要です。技術とビジネス、両方の視点を持つことで、SEは単なる開発者ではなく、ビジネスを加速させる重要なコンサルタントとしての価値を発揮できるようになるでしょう。

「伝わる」デザイン思考とユーザーファーストの視点

システムエンジニアの仕事は、バックエンドの複雑な処理や堅牢なインフラ構築だけにとどまりません。ユーザーが実際に触れる部分、つまり「使いやすさ」や「見た目の美しさ」といった「デザイン」の視点も、現代のSEにとって非常に重要な能力となっています。

ここで言うデザインとは、単なる視覚的な装飾を指すのではなく、ユーザー体験（UX）とユーザーインターフェース（UI）全体を最適化するための「デザイン思考」を意味します。どれほど高性能なシステムであっても、使いづらければユーザーに活用されず、その価値を十分に発揮することはできません。

ユーザーファーストの視点とは、「この機能はユーザーにとって本当に必要か」「この画面は直感的に操作できるか」「エラーメッセージは分かりやすいか」といった問いを常に持ち、システムを利用する人の立場に立って考えることです。SEは、単に要求された機能を実装するだけでなく、ユーザーが迷わずに操作でき、快適に利用できるようなインターフェースを設計・構築する責任があります。

この能力を磨くためには、ユーザーインタビューや行動観察を通じて実際のユーザーのニーズや課題を深く理解すること、プロトタイプを作成して早期にフィードバックを得ること、そしてアクセシビリティやユニバーサルデザインの原則を学ぶことが有効です。技術的な知識に加えて、共感力や創造性を活かしたデザイン思考を身につけることで、SEは単に動くシステムではなく、人々に愛され、真に価値を提供するシステムを生み出すことができるようになるでしょう。

変化の時代を生き抜く：セルフマネジメントとキャリアデザイン

IT業界は変化の激しい世界であり、システムエンジニアとして長く活躍し続けるためには、技術力やビジネススキルだけでなく、「セルフマネジメント」と「キャリアデザイン」の能力が不可欠です。

まず、セルフマネジメントは、長時間労働や精神的なプレッシャーと向き合う上で非常に重要になります。自身の体調や精神状態を客観的に把握し、適切な休息を取ったり、ストレス解消法を見つけたりする能力です。プロジェクトの進捗管理だけでなく、自身の時間管理やタスク管理を効率的に行うことで、オーバーワークを防ぎ、健康的なワークライフバランスを保つことができます。具体的には、優先順位をつけてタスクに取り組む、集中できる環境を整える、定期的に運動する、趣味の時間を確保するといった工夫が有効です。

次に、キャリアデザインです。IT技術の進化は目覚ましく、SEのキャリアパスも多様化しています。特定の技術を極めるスペシャリスト、プロジェクト全体を管理するプロジェクトマネージャー（PM）、顧客の経営課題を解決するITコンサルタント、あるいは開発チームを率いるテックリードなど、様々な道があります。自身の興味や強み、将来の目標を明確にし、どのようなSEになりたいのかを具体的に描くことが、計画的なスキルアップや経験の積み重ねにつながります。

DX（デジタルトランスフォーメーション）の推進やAI、IoTといった先端技術の発展により、IT人材の需要は今後も高まることが予想されます。この変化の波を乗りこなし、自身の市場価値を高めていくためには、常に自身のキャリアを見つめ直し、必要なスキルを習得し、新たな挑戦を恐れない柔軟な姿勢がSEには求められます。

システムエンジニアの意外な一面：趣味や人間関係

仕事とプライベートのバランス術：SEのリフレッシュ方法

システムエンジニアの仕事は、長時間労働や高いストレスが伴うことが多いため、仕事とプライベートのバランスをいかに保ち、心身をリフレッシュするかが非常に重要になります。

意外に思われるかもしれませんが、多くのSEは仕事以外にも様々な趣味を持ち、それをリフレッシュの源としています。例えば、体を動かすことが好きなSEは、フットサルやバスケットボールなどのスポーツで汗を流したり、ジムに通って筋トレをしたりすることで、デスクワークで凝り固まった体をほぐし、ストレスを発散しています。また、キャンプや登山といったアウトドア活動を通じて、自然の中で心を癒やし、リフレッシュする人も少なくありません。

インドア派のSEであれば、ゲームや読書、映画鑑賞、音楽鑑賞、楽器演奏などに没頭することで、仕事から離れた時間を楽しんでいます。中には、複雑なシステムを構築する仕事の反動で、プラモデル作りやDIYなど、物理的なものづくりに没頭する人もいます。これらの趣味を通じて、論理的思考とは異なる脳の部分を使い、創造性を刺激することで、仕事への新たな視点やアイデアが生まれることもあります。

重要なのは、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけ、意識的に仕事から離れる時間を作ることです。たとえ忙しくても、短時間でも気分転換になる活動を取り入れることで、集中力を維持し、心身の健康を保つことができるでしょう。適切な休暇を取り、趣味に没頭する時間は、SEにとって単なる休息ではなく、次なる仕事への活力となる大切な投資なのです。

チームで創り上げる喜び：SEの人間関係とコミュニケーション

システムエンジニアの仕事は、一人で黙々とコードを書くイメージがあるかもしれませんが、実際はチームでの協業が不可欠です。大規模なシステム開発では、要件定義、設計、開発、テスト、品質保証など、様々な役割を持ったSEやプログラマー、デザイナーが協力し合って一つの目標に向かいます。そのため、SEにとって良好な人間関係と円滑なコミュニケーション能力は、技術力と同様に非常に重要な要素となります。

プロジェクトを進める上で、チームメンバーとの情報共有は欠かせません。進捗状況の報告、課題や問題点の共有、技術的な相談、レビュー、そして時には意見の衝突も発生します。このような状況で、自分の意見を明確に伝え、相手の意見を尊重し、建設的な議論ができるコミュニケーション能力が求められます。報連相（報告・連絡・相談）を徹底することで、認識の齟齬を防ぎ、プロジェクトをスムーズに進めることができます。

また、厳しい納期や予期せぬトラブルに直面した時こそ、チームワークの真価が問われます。互いに助け合い、励まし合うことで、困難を乗り越えることができます。プロジェクトが成功し、システムが無事に稼働した時には、チームメンバー全員でその喜びを分かち合うことができます。この「チームで創り上げる喜び」は、SEの大きなモチベーションの一つとなるでしょう。

定期的なチームミーティング、コードレビュー、ランチや飲み会などの交流を通じて、メンバー間の信頼関係を築くことは、プロジェクトの生産性を高めるだけでなく、SE自身の働きがいや満足度向上にも繋がります。人間関係は時に難しいものですが、良好なコミュニケーションを心がけることで、SEの仕事はより充実したものとなるでしょう。

SEから広がる多様なキャリアと成長の道

システムエンジニアとしてのキャリアは、決して一本道ではありません。技術の進化とともに、SEのキャリアパスも多様化しており、自身の興味や強みに合わせて様々な成長の道を選ぶことができます。

一つは、特定の技術領域を深く掘り下げていく「スペシャリスト」の道です。例えば、高度なセキュリティ技術に特化したセキュリティエンジニア、データベースの設計・最適化を専門とするDBA（データベース管理者）、クラウド環境の構築・運用に特化したクラウドエンジニアなどがこれに当たります。AIやIoTといった最先端技術の専門家として、業界をリードしていくことも可能です。

もう一つは、プロジェクト全体を管理・推進する「マネジメント」の道です。プロジェクトの計画立案から実行、進捗管理、品質管理、リスク管理、そして人員管理まで、プロジェクト全体を統括するプロジェクトマネージャー（PM）や、開発チームを技術面でリードするテックリード（TL）などが代表的なキャリアです。技術的な知見に加え、リーダーシップやコミュニケーション能力が強く求められます。

さらに、IT技術をビジネス課題解決に活用する「ITコンサルタント」や、ユーザー視点でのシステム設計を行う「UI/UXデザイナー」、自社サービスを企画・開発する「プロダクトマネージャー」といった、SEの経験を活かして全く異なる職種へキャリアチェンジすることも可能です。

DX（デジタルトランスフォーメーション）が社会全体で加速する中で、システムエンジニアの需要は今後も高まり続けることが予想されます。常に新しい技術を学び、自身の市場価値を高めることで、SEは多様な選択肢の中から自身の望むキャリアを主体的にデザインし、長く活躍し続けることができるでしょう。

まとめ

システムエンジニアの仕事は、顧客のニーズを理解し、それを実現するための情報システムを設計・開発する、非常にやりがいのある専門職です。

複雑な問題を解決する達成感、自身のアイデアが形になる創造性、常にスキルアップできる機会、そして社会貢献性といった多くの魅力があります。また、厚生労働省のデータが示すように、スキルや経験に応じた高収入も期待できる職種です。

しかし、その裏には、長時間労働や過密なスケジュール、納期に追われるプレッシャー、頻繁な仕様変更への対応といった知られざる苦悩も存在します。これらの要因が、精神的・肉体的な負担となり、健康問題につながるリスクも指摘されています。

政府は「働き方改革」を推進し、労働環境の改善に向けた取り組みが進められているものの、IT業界特有の人手不足や受発注の仕組みなど、依然として多くの課題が残っています。また、技術の進化が速いため、SEには常に継続的な学習が求められ、属人化やバグとの戦いも日常茶飯事です。

このような厳しい側面がある一方で、SEは技術力だけでなく、ビジネス視点、デザイン思考、セルフマネジメント、そして良好な人間関係を築くコミュニケーション能力を磨くことで、多様なキャリアパスを築き、変化の時代を生き抜くことができます。

システムエンジニアという職業は、確かに困難も多いですが、それを乗り越えた時の達成感や、社会に与える影響の大きさは計り知れません。自身の適性やキャリアプランを考慮し、これらのリアルな情報を踏まえてSEという職業を検討することが、後悔のない選択につながるでしょう。

主な情報源:

• 厚生労働省 職業情報提供サイト（job tag）
• 厚生労働省 「IT業界における働き方改革」
• 厚生労働省 働き方改革ハンドブック（情報通信業〈情報サービス業編〉）