概要: 固定資産台帳の選び方、管理方法、減価償却の基本、そして導入のメリット・デメリットまで、初心者にも分かりやすく解説します。中小企業や個人事業主が抱えがちな課題とその解決策、おすすめのツールについてもご紹介します。
【初心者必見】固定資産台帳の選び方と管理を徹底解説!
固定資産台帳は、企業が保有する固定資産を正確に管理するために不可欠な帳簿です。
適切に管理することで、正確な税務申告はもちろん、無駄な税負担を軽減し、健全な経営判断にも役立ちます。
本記事では、固定資産台帳の選び方から管理方法、よくある課題とその解決策まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
固定資産管理に苦手意識がある方も、この記事を読めばきっとスムーズに進められるようになるでしょう。
固定資産台帳とは?導入するメリット・デメリット
固定資産台帳の導入を検討する前に、まずはその基本的な役割と、事業にもたらすメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。
正確な知識を身につけることで、自社に最適な管理方法を選ぶ第一歩となります。
固定資産台帳の基本を知ろう
固定資産台帳とは、企業が事業で使用する固定資産(土地、建物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、ソフトウェアなど)の取得から除却・譲渡までの詳細な情報を記録・管理する帳簿です。
会計帳簿における「補助簿」に位置づけられ、主要な会計帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など)を補完する役割を担います。
税法では7年間、会社法では10年間の保存が義務付けられており、重要な記録として扱われます。
具体的には、以下の項目を正確に記録します。
- 資産名称・資産番号:各資産を特定するための固有の名称と番号
- 取得価額・取得年月日:資産の購入費用と取得した日付
- 耐用年数・償却方法:減価償却計算に用いる法定耐用年数や償却方法(定額法、定率法など)
- 減価償却累計額・期末帳簿価額:各会計期間の減価償却費と期末時点での資産価値
- 所在場所・管理部署:資産の物理的な所在地や管理責任部署
これらの情報を一元的に管理することで、資産の状況を可視化し、適切な会計処理と税務申告を可能にします。
固定資産管理がもたらす4つのメリット
固定資産台帳を適切に運用することは、企業の財務と経営に多大なメリットをもたらします。
単なる義務的な作業ではなく、経営戦略の一環として捉えるべき重要なプロセスです。
- 正確な税務申告:
固定資産台帳は、減価償却費を適切に計算するための基盤となります。減価償却費は損金算入できるため、法人税などの計算に直結します。
また、固定資産税(償却資産税)の課税対象となる資産を正確に把握し、正しい納税を行うためにも不可欠です。
正確な台帳があれば、税務調査の際にもスムーズに対応できます。 - 節税効果:
償却が完了した資産や、すでに使用しておらず不要となった資産を効率的に把握できます。
これらを速やかに除却・廃棄することで、不要な固定資産税の負担を回避し、節税に繋げることが可能です。
また、減価償却費を計画的に計上することで、利益を平準化し、課税所得を適切に管理できます。 - 経営判断の材料:
固定資産の状況を詳細に把握することで、経営層はより的確な判断を下せるようになります。
例えば、老朽化した設備の更新時期の検討、新たな設備投資計画の立案、遊休資産の有効活用や売却など、戦略的な意思決定に役立つ情報を提供します。 - 法令遵守:
税法や会計基準は度々改正されます。固定資産台帳を適切に管理することで、常に最新の法令や基準に対応し、コンプライアンスを維持できます。
特に、減価償却の方法や耐用年数の変更などがあった場合でも、迅速かつ正確に対応できる体制を構築できます。
これらのメリットは、企業の信頼性を高め、持続的な成長を支える基盤となります。
導入における課題と考慮すべき点
多くのメリットがある一方で、固定資産台帳の導入と運用にはいくつかの課題も伴います。
これらを事前に把握し、対策を講じることがスムーズな運用への鍵となります。
- 初期導入の手間:
特に既存の資産が多い場合、初期データの入力や移行作業はかなりの労力を要します。
資産一つ一つの詳細情報を収集し、正確に台帳に反映させる作業は、時間と集中力が必要です。
この段階でのミスが、後の管理に大きな影響を与えることもあります。 - 担当者の知識・スキル:
固定資産管理には、会計や税務に関する専門知識が求められます。
特に、減価償却計算や償却資産税の申告などは、複雑なルールがあり、担当者の知識レベルに依存しやすい傾向があります。
Excelで管理する場合、担当者のスキルによって管理の質が大きく左右されることがあります。 - コストと選定:
固定資産管理システムを導入する場合、初期費用や月額利用料といったコストが発生します。
また、自社の業種や規模、必要な機能に合ったシステムを選ぶための情報収集や比較検討も、専門知識がないと難しい場合があります。
機能が多すぎても使いこなせず、少なすぎても業務が非効率になるため、適切な選定が重要です。
これらの課題に対し、十分な準備と計画、そして適切なツールの選定を行うことが、固定資産台帳の成功的な導入に繋がります。
固定資産台帳の選び方:システム・エクセル・無料ツールの比較
固定資産台帳の管理方法は、企業の規模や保有資産数、予算によって最適な選択肢が異なります。
ここでは、主に「Excelでの管理」「固定資産管理システム」「無料ツール」の3つの方法を比較し、それぞれの特徴と選び方のポイントを解説します。
手軽さが魅力!Excelでの管理
Excel(エクセル)などの表計算ソフトを用いた管理は、多くの小規模事業者や個人事業主にとって、まず最初に検討される選択肢です。
その最大の魅力は、導入コストがかからない点と、手軽に始められる点にあります。
基本的なPCスキルがあれば、自分でフォーマットを作成し、すぐに管理を開始できます。
また、自由にレイアウトをカスタマイズできるため、自社の特定のニーズに合わせて調整しやすいという柔軟性もメリットです。
しかし、資産数が増加するにつれて、以下のような課題が顕在化しやすくなります。
- 管理の煩雑化:資産の数が数十個、数百個と増えると、シートが複雑になり、情報の追跡が困難になります。
- 入力漏れ・計算ミスのリスク:手作業での入力や計算が多いため、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。特に減価償却計算は複雑なため、ミスが税務申告に影響を及ぼす可能性があります。
- 情報共有の難しさ:複数人で管理する場合、ファイルの共有や最新版の管理が難しく、データの一貫性を保つのが困難になります。
- 法改正への対応:税法や会計基準の改正があった場合、手動で計算式やフォーマットを修正する必要があり、手間と専門知識が求められます。
これらのデメリットを考慮すると、保有資産が非常に少ない事業所や、初期段階でコストを抑えたい場合に限定してExcel管理が適していると言えるでしょう。
ただし、将来的な事業拡大を見据えるならば、いずれはより効率的な方法への移行を検討する必要があります。
効率化を追求するなら固定資産管理システム
中規模以上の企業や、複数の拠点で多くの固定資産を保有している場合、固定資産管理システムの導入が最も効率的かつ正確な管理方法となります。
システムを導入することで、手作業による負担を大幅に軽減し、業務の自動化と効率化を実現できます。
主なメリットは以下の通りです。
- 業務効率の大幅な向上:減価償却計算、償却資産申告書の作成などを自動化できます。これにより、手作業による時間と労力を削減し、担当者はより戦略的な業務に集中できます。
- 正確性の確保:システムが自動で計算を行うため、人為的なミスをなくし、常に正確な資産情報を維持できます。
- 法令遵守の容易化:多くのシステムは、最新の税法や会計基準に自動で対応するため、法改正の度に手動で設定を変更する手間が省け、法令遵守が容易になります。
- 情報の一元管理と連携性:資産情報を一元的に管理できるため、リアルタイムで正確な状況を把握できます。また、会計ソフトや基幹システムとの連携により、経理業務全体の効率化やデータの整合性確保が期待できます。
一方で、導入にはコストがかかり、自社に合ったシステムを選ぶための比較検討が必要というデメリットもあります。
システム選定の際には、以下のポイントを確認しましょう。
- 会計基準への対応:日本会計基準、IFRSなど、自社が採用している会計基準に対応しているか。
- 必要な機能の搭載:減価償却計算、リース資産管理、建設仮勘定管理、減損会計など、自社の業務に必須の機能が備わっているか。
- 既存システムとの連携性:現在利用している会計ソフトや基幹システムとスムーズに連携できるか。
- サポート体制:導入後の問い合わせやトラブル発生時に、迅速かつ的確なサポートが受けられるか。
代表的な固定資産管理システムには、「固定資産奉行クラウド」「マネーフォワード クラウド固定資産」「PCA固定資産DXクラウド」などがあります。
これらのシステムは、複雑な固定資産管理を効率化し、企業の成長を力強く支援してくれるでしょう。
無料ツール(クラウドサービスなど)の活用と限界
Excel以外の選択肢として、Google Sheetsのようなクラウド型表計算ソフトや、一部の無料クラウド会計ソフトに搭載されている簡易的な固定資産管理機能も存在します。
これらはExcelと同様に無料で始められるという大きなメリットを持ちつつ、クラウドの特性を活かして、複数人での同時編集や情報共有が比較的容易であるという利点があります。
例えば、Google Sheetsを使えば、インターネット環境さえあればどこからでもアクセスでき、担当者間でリアルタイムに情報を更新・共有できます。
一部の無料クラウド会計ソフトでは、固定資産の登録や減価償却費の自動計算といった基本的な機能が提供されていることもあり、小規模事業者にとっては魅力的な選択肢となり得ます。
しかし、これらの無料ツールや簡易機能には、以下のような限界もあります。
- 機能の制限:専用の固定資産管理システムと比較すると、機能が限定的です。複雑な償却方法への対応、リース資産管理、減損会計、建設仮勘定管理など、高度な機能は期待できません。
- セキュリティ:クラウドサービスを利用する場合、データのセキュリティ対策が十分であるかを確認する必要があります。特に機密性の高い財務情報であるため、信頼できるサービスを選ぶことが重要です。
- 法改正対応の遅れ:無料ツールの場合、税法や会計基準の改正への対応が遅れる、あるいは手動での更新が必要となる場合があります。
- 拡張性の不足:事業規模が拡大し、資産数が増えた際に、管理が複雑化し、機能不足を感じる可能性が高いです。
無料ツールは、ごく小規模で資産数が少なく、かつ専門的な管理が不要な段階においては有効な選択肢ですが、事業の成長とともに限界を感じるタイミングが訪れるでしょう。
その際は、専用の固定資産管理システムへの移行を積極的に検討することが賢明です。
固定資産管理の基本:減価償却と償却資産税のポイント
固定資産台帳を適切に管理するためには、会計処理の核となる「減価償却」と、事業者に課される「償却資産税」についての理解が不可欠です。
これらは複雑に感じられるかもしれませんが、基本を押さえれば、正確な税務申告と節税に繋がります。
減価償却とは?仕組みと計算方法
減価償却とは、建物や機械、車両などの固定資産が、時間の経過や使用によってその価値が減少していくことを会計上、費用として認識する手続きのことです。
これらの資産は、購入した年に全額を費用として計上するのではなく、耐用年数に応じて費用を配分していくことで、企業の正確な損益を計算します。
この費用を「減価償却費」と呼びます。
減価償却費の計算に必要な要素は以下の3つです。
- 取得価額:資産を購入するためにかかったすべての費用(購入代金、付随費用など)。
- 耐用年数:税法で定められた、資産が通常の用途で使用できる期間。資産の種類によって異なります(例:普通乗用車の耐用年数は6年)。
- 償却方法:減価償却費を配分する方法。主に「定額法」と「定率法」があります。
- 定額法:毎年同じ額の減価償却費を計上する方法。計算がシンプルで計画が立てやすいのが特徴です。
- 定率法:未償却残高に一定率を乗じて減価償却費を計上する方法。初期の償却費が多く、徐々に減少していくのが特徴です。
固定資産台帳では、これらの情報を正確に記録し、毎期計算される減価償却累計額と期末帳簿価額を更新していきます。
これにより、資産の実態価値を会計帳簿に反映させ、適正な損益計算と税務上のメリット(損金算入による節税)を得ることが可能になります。
償却資産税の基礎知識と申告の注意点
償却資産税は、固定資産税の一種で、企業や個人事業主が事業のために使用する土地や家屋以外の有形固定資産(償却資産)に対して課される地方税です。
毎年1月1日時点での償却資産の所有者に課税されます。
税率は、一般的に1.4%と定められています。
課税対象となる償却資産の例:
- 構築物(外構、舗装など)
- 機械及び装置(工場設備、建設機械など)
- 船舶、航空機
- 車両及び運搬具(社用車、フォークリフトなど)
- 工具、器具及び備品(パソコン、机、エアコン、医療機器など)
- ソフトウェア(自己開発ソフトウェアなど)
注意点として、取得価額が10万円未満の減価償却資産や、少額減価償却資産の特例を適用した資産(30万円未満)は、原則として課税対象とはなりません。
しかし、一括償却資産(20万円未満)として処理したものは対象となるなど、細かなルールが存在するため、注意が必要です。
償却資産税の申告は、毎年1月末日までに、資産が所在する市町村(東京23区は都税事務所)に対して「償却資産申告書」を提出することで行います。
申告を怠ったり、誤りがあったりすると、追徴課税や延滞金が発生する可能性があるため、正確な申告が極めて重要です。
固定資産管理システムを導入していれば、この償却資産申告書を自動で作成できるため、業務負担を大幅に軽減できます。
法改正への対応と資産の棚卸の重要性
固定資産管理において、法令遵守は非常に重要です。
税法や会計基準は、社会情勢の変化に応じて度々改正されるため、常に最新の情報を把握し、管理体制をアップデートしていく必要があります。
例えば、減価償却方法の変更や、特定の資産に対する特例措置の新設などがあり得ます。
固定資産管理システムを導入していれば、これらの法改正に自動で対応してくれるため、常に安心して法令を遵守した運用が可能です。
もう一つ、固定資産管理で欠かせないのが定期的な棚卸と現物確認です。
固定資産台帳に記載されている情報と、実際に会社にある資産が一致しているかを定期的に確認する作業を指します。
これにより、以下のようなリスクを防ぐことができます。
- 所在不明資産:台帳にはあるが、実物がどこにあるか分からない資産。
- 未登録資産:実物はあるが、台帳に登録されていない資産。
- 廃棄漏れ資産:すでに廃棄されているにもかかわらず、台帳に残り続けている資産。
- 破損・劣化状況の確認:資産の状態を把握し、修理や更新の計画に役立てる。
実地棚卸は、年に一度は実施することが推奨されます。
バーコードやQRコードを資産に貼付し、リーダーで読み取ることで、棚卸作業を効率化できるシステムも多く存在します。
台帳と現物の整合性を保つことは、正確な会計処理と税務申告の基礎となるだけでなく、資産の有効活用にも繋がります。
固定資産台帳導入でよくある課題と解決策
固定資産台帳の導入や運用には、多くの企業が共通の課題に直面します。
これらの課題を事前に認識し、適切な解決策を講じることで、スムーズかつ効率的な固定資産管理を実現できます。
データ入力・管理のミスを防ぐには?
固定資産台帳の運用において、最も頻繁に発生しがちな課題の一つが、データ入力時のミスや転記ミスです。
特にExcelで手動管理している場合、資産の数が増えれば増えるほど、入力漏れや計算式の誤り、担当者ごとの入力規則のばらつきなどが生じやすくなります。
これらのミスは、減価償却費の計算や償却資産税の申告に直接影響し、正確な財務情報を提供できないだけでなく、税務リスクを高める原因にもなります。
この課題に対する解決策は以下の通りです。
- 入力規則の徹底:Excelを使用する場合でも、データの入力規則を設定し、入力する値の形式や範囲を制限することで、誤入力を防ぎます。また、入力マニュアルを作成し、全担当者で共有することで、統一されたデータ入力が行えるようになります。
- テンプレートの活用:あらかじめ計算式や必須入力項目が設定されたテンプレートを使用することで、入力漏れや計算ミスのリスクを低減できます。
- 固定資産管理システムの導入:最も効果的な解決策は、固定資産管理システムを導入することです。システムは、取得価額や取得年月日を入力するだけで、減価償却費の計算や台帳の更新を自動で行うため、人為的なミスを大幅に削減できます。会計ソフトとの連携機能があれば、二重入力の手間も省けます。
- 複数人でのチェック体制:入力後のデータに対して、複数人でのダブルチェック体制を構築することも重要です。特に重要な数値や新規登録資産については、細心の注意を払って確認しましょう。
これらの対策を組み合わせることで、データの正確性を高め、信頼性の高い固定資産台帳を維持できます。
法改正や税制変更への対応をスムーズに
税法や会計基準は、頻繁に改正が行われます。
これらの法改正や税制変更への対応は、固定資産管理における大きな課題の一つです。
例えば、減価償却方法の変更、耐用年数の見直し、特定の設備投資に対する税制優遇措置の新設・廃止など、常に最新情報をキャッチアップし、自社の固定資産管理に反映させる必要があります。
特にExcelで管理している場合、自分で計算式を修正したり、新しいルールを適用したりする手間と専門知識が求められ、対応が遅れるリスクがあります。
この課題に対する解決策は以下の通りです。
- 固定資産管理システムの活用:最も有効な解決策は、法改正に自動で対応する固定資産管理システムを導入することです。多くのシステムは、法改正が行われると、自動的にプログラムがアップデートされ、最新の税制や会計基準に基づいた計算が行われるようになります。これにより、担当者の負担を大幅に軽減し、常に法令を遵守した管理が可能です。
- 税理士や専門家との連携:顧問税理士と密に連携し、法改正に関する情報を早期に入手することも重要です。疑問点や不明点があれば、すぐに専門家に相談できる体制を整えましょう。
- 情報源の確保:国税庁のウェブサイト、会計基準の公表団体、専門誌など、信頼できる情報源から定期的に最新情報を収集する習慣をつけましょう。
- 社内での学習会:固定資産管理に関わる担当者全員で、法改正の内容やその影響について学習する機会を設けることも有効です。
これらの対策を通じて、法改正へのスムーズな対応を実現し、税務リスクを最小限に抑えることができます。
資産の現物と台帳の不一致、所在不明資産の対処法
固定資産管理において、台帳上の記録と現物の状況が一致しない「台帳不一致」は、多くの企業が抱える課題です。
資産の移動、紛失、廃棄漏れ、あるいは台帳への未登録などが原因で発生し、これが積み重なると、正確な財務状況を把握できなくなるだけでなく、監査での指摘事項や税務上の問題に発展する可能性もあります。
特に所在不明資産は、不要な固定資産税を支払い続ける原因にもなります。
この課題に対する解決策は以下の通りです。
- 定期的な実地棚卸の実施:台帳と現物の整合性を確認するため、年に一度は必ず実地棚卸を実施しましょう。全ての固定資産を物理的に確認し、台帳の記録と突き合わせることで、所在不明資産や未登録資産を発見できます。
- バーコード・RFIDタグの活用:棚卸作業を効率化するためには、各資産にバーコードやRFIDタグを貼付し、専用のリーダーで読み取るシステムを導入するのが効果的です。これにより、膨大な数の資産でも迅速かつ正確に棚卸を行うことが可能になります。
- 資産の移動・廃棄プロセスの明確化:資産を移動させる際や廃棄する際には、必ず申請・承認のプロセスを設け、台帳の情報も同時に更新するルールを徹底しましょう。担当者任せにせず、明確な手順と責任者を定めることが重要です。
- 資産管理担当者の明確化:各部署や拠点において、固定資産の管理責任者を明確にすることで、資産の所在や状況を常に把握できる体制を構築します。
これらの対策を通じて、台帳と現物の整合性を常に保ち、企業の資産を適切に管理することができます。
中小企業・個人事業主におすすめの固定資産台帳
中小企業や個人事業主の場合、大企業とは異なるリソースや予算の制約があるため、固定資産台帳の選び方も慎重に行う必要があります。
ここでは、それぞれの事業規模や状況に応じたおすすめの選択肢と、導入前に確認すべきポイントをご紹介します。
資産が少ない・初期段階ならExcelが有力な選択肢
事業を立ち上げたばかりの個人事業主や、保有する固定資産の数がごく少数(例えば、パソコン、社用車、オフィス家具など数個から数十個程度)の中小企業であれば、まずはExcelでの管理が有力な選択肢となります。
Excelは、追加費用なしで手軽に導入できるため、初期投資を抑えたい場合に最適です。
インターネット上には、無料でダウンロードできる固定資産台帳のテンプレートも多数存在しており、これらを活用すればすぐに管理を始められます。
Excelで管理する際のポイントは以下の通りです。
- シンプルなフォーマット:必要最低限の項目(資産名称、取得価額、取得年月日、耐用年数、償却方法など)に絞り、複雑なシートにしない。
- 入力規則の活用:日付形式や数値形式を制限し、入力ミスを防ぐ。
- 計算式の固定:減価償却費の計算式はテンプレート化し、間違って上書きしないように保護する。
- 定期的なバックアップ:データの紛失を防ぐため、定期的にバックアップを取る。
ただし、事業が成長し、資産数が数百個を超えるようになったり、複数拠点での管理が必要になったりする段階では、Excelの限界を感じるはずです。
その際は、後述するクラウド型システムへの移行を積極的に検討しましょう。
会計ソフトと連携できるクラウド型システム
事業規模が拡大し、資産数が増えてきたり、経理業務全般の効率化を図りたい中小企業・個人事業主には、クラウド型の固定資産管理システム、特に既存の会計ソフトと連携できるタイプがおすすめです。
これらのシステムは、月額利用料で提供されることが多く、高額な初期投資を必要としないため、導入ハードルが低いのが特徴です。
主なメリットは以下の通りです。
- 会計ソフトとのシームレスな連携:
多くのクラウド会計ソフト(マネーフォワード、freee、弥生会計など)には、固定資産管理機能が統合されているか、連携可能な専用の固定資産システムがあります。
これにより、固定資産の取得や除却に関する仕訳が自動で作成され、減価償却費も自動で計上されるため、経理業務が大幅に効率化されます。 - 法改正への自動対応:
クラウドシステムは定期的にアップデートされるため、税法や会計基準の改正にも自動で対応します。これにより、法令遵守の手間が省け、安心して運用できます。 - 場所を選ばないアクセス:
インターネット環境があれば、オフィスだけでなく自宅や出張先からでも固定資産台帳にアクセスし、確認・更新が可能です。 - セキュリティとバックアップ:
専門ベンダーがシステムのセキュリティ対策やデータのバックアップを管理してくれるため、自社でこれらの心配をする必要がありません。
例えば、「マネーフォワード クラウド固定資産」や「PCA固定資産DXクラウド(中小企業向けプラン)」などは、中小企業・個人事業主が導入しやすい価格帯と充実した機能を兼ね備えています。
まずは無料お試し期間などを利用して、自社に合うか試してみることをおすすめします。
導入前に確認すべきチェックリスト
固定資産管理システムを導入する際、失敗しないためには事前の情報収集と比較検討が不可欠です。
以下のチェックリストを活用し、自社に最適なシステムを選定しましょう。
| 項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 1. 予算 | 初期費用(導入費用)、月額/年額利用料、オプション費用など、総合的なコストを確認しましょう。 |
| 2. 資産数 | 現在の固定資産数と、将来的な事業拡大を見据えた増加予測を考慮した上で、システムの処理能力を確認しましょう。 |
| 3. 必要機能 |
自社に必須な機能が搭載されているかを確認します。 |
| 4. 会計基準対応 | 自社が採用している会計基準(日本会計基準など)に正確に対応しているかを確認します。 |
| 5. 既存システムとの連携 | 現在利用している会計ソフトや給与計算ソフト、基幹システムなどとスムーズに連携できるかを確認します。 |
| 6. サポート体制 | 導入後のサポート(電話、メール、チャット)、FAQ、導入研修などの充実度を確認しましょう。 |
| 7. 操作性 | デモ版や無料試用期間を利用して、担当者が直感的に操作できるか、使いやすいインターフェースであるかを確認しましょう。 |
これらの点を総合的に検討し、複数のシステムを比較することで、自社にとって最適な固定資産管理システムを見つけることができるでしょう。
無料試用期間を積極的に活用し、実際の使用感を確かめることが成功への鍵となります。
まとめ
よくある質問
Q: 固定資産台帳を導入する主なメリットは何ですか?
A: 固定資産台帳を導入することで、資産の正確な把握、減価償却費の計算ミス防止、税務調査への対応力向上、管理業務の効率化などが期待できます。
Q: 固定資産台帳の管理方法にはどのような選択肢がありますか?
A: 主な管理方法として、Excelによる手作業、固定資産管理システム(クラウド型・オンプレミス型)、そして無料ツールがあります。それぞれの特徴や費用、機能などを比較検討することが重要です。
Q: 減価償却とは何ですか?
A: 減価償却とは、固定資産の取得にかかった費用を、その資産の使用可能期間に応じて分割して費用計上していく会計処理のことです。これにより、毎年の利益を適正に計算します。
Q: 固定資産台帳の導入でよくある課題と、その解決策を教えてください。
A: よくある課題としては、初期設定の手間、担当者の知識不足、既存システムとの連携などが挙げられます。これらの課題に対しては、十分な研修、専門家への相談、柔軟なシステム選定などが解決策となります。
Q: 中小企業や個人事業主でも導入しやすい固定資産台帳はありますか?
A: はい、中小企業や個人事業主向けに、低コストまたは無料から始められるクラウド型の固定資産管理システムや、Excelテンプレートなどがおすすめです。自社の規模や予算、必要な機能に応じて検討すると良いでしょう。
