【完全ガイド】納品書の書き方と記載すべき必須事項

商品やサービスの取引において欠かせない「納品書」。法的な発行義務はないものの、取引の事実を明確にし、後のトラブルを防ぐための重要な書類です。
しかし、「どう書けばいいのか」「何が必須項目なのか」「インボイス制度との関係は?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2025年時点の最新情報を踏まえ、納品書の基本的な書き方から、日付、金額、さらには返品・返金時の対応まで、知っておくべき必須事項を網羅的に解説します。
読みやすいブログ記事形式で、実際の業務に役立つ具体的なポイントをご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

納品書に記載すべき基本情報とは?

納品書の役割と発行の重要性

納品書は、商品やサービスを相手方に納品した事実を証明するための書類です。その主な役割は、「いつ」「何を」「いくつ」「どこへ」納品したのかを明確にすることにあります。
これにより、受け取った側は商品の内容と数量を容易に確認でき、発注内容との相違がないかをチェックすることができます。
法的に発行が義務付けられている書類ではありませんが、取引の事実を裏付ける重要な「証憑書類」として、多くの企業で発行が推奨されています。
特に、商品に不備があった場合や、後日請求書との内容確認が必要になった際など、納品書は双方にとって取引内容を証明する根拠となります。
正確な納品書があることで、トラブル発生時の迅速な解決にも繋がり、円滑な取引関係を維持する上でも不可欠な存在と言えるでしょう。

必須項目と任意記載推奨項目の一覧

納品書に特定の法的書式はありませんが、取引の証憑として機能させるためには、以下の項目を正確に記載する必要があります。
これらの情報は、後々の確認や会計処理、さらにはインボイス制度への対応においても重要となります。

  • タイトル:「納品書」と明確に記載します。
  • 納品書番号:発行した納品書を管理するための固有の通し番号です。
  • 発行年月日:商品を納品した日、または出荷した日を記載します。
  • 納品先(買い手)の氏名または名称:企業名、担当部署、担当者名を正確に記載し、「御中」や「様」を適切に用います。
  • 納品元(売り手)の氏名または名称:自社の企業名や担当者名を記載します。
  • 納品の明細
    • 品名
    • 数量
    • 単価
    • 小計
    • (軽減税率の対象品目である旨)
    • 税率ごとに区分した合計金額(税込)
  • 合計金額:最終的な税込の合計金額を記載します。

また、上記以外に発行者の連絡先(電話番号、メールアドレスなど)を任意で記載しておくと、内容確認や不備があった際に、納品先からの問い合わせにスムーズに対応できるため、推奨されます。

インボイス制度への対応と注意点

2023年10月1日から導入された「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」は、納品書の作成にも大きな影響を与えています。
適格請求書発行事業者が発行する納品書が、インボイス制度の要件を満たしていれば、その納品書を「適格請求書」として利用することが可能です。
具体的には、納品書に以下の項目が追加で記載されている必要があります。

  • 適格請求書発行事業者の登録番号
  • 適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額

これにより、買い手側は仕入税額控除の適用を受けることができます。
もし納品書を適格請求書として使用しない場合でも、上記の必須項目(特に税率ごとの区分)は正確に記載しておくことが、後々の請求書作成や税務処理の際の手間を省くことに繋がります。
ご自身の事業が適格請求書発行事業者であるか、また取引先がインボイス制度への対応を求めているかを事前に確認し、適切な形式で納品書を発行することが、2025年時点のビジネスにおいては非常に重要となります。

日付、金額、値引き、マイナス金額の書き方

発行年月日と納品日の扱い

納品書に記載する「発行年月日」は、通常、商品を納品した日、または出荷した日を指します。この日付は、取引の発生日を示す重要な情報であり、会計処理における計上時期の基準ともなります。
場合によっては、納品先での「検収日」を納品日とする取引慣習もありますので、事前に取引先と確認しておくことが望ましいでしょう。
日付の表記形式については、西暦・和暦のどちらを使用しても問題ありませんが、企業間で統一されていることが多いです。一般的には、国際的な取引も考慮し、西暦での表記(例:2025年1月15日)が推奨されます。
また、納品書を作成する日付と納品日が異なる場合も考えられますが、原則として、実際に商品が納品された日、または出荷された日を記載するようにしましょう。
正確な日付記載は、後日の紛争防止や、適切な書類管理に不可欠です。

合計金額の正しい表記ルール

納品書の「合計金額」は、取引の最終的な対価を示す最も重要な項目の一つです。この金額は、税込価格で記載することが一般的です。
金額の表記には、視認性と正確性を高めるための慣習があります。具体的には、金額の先頭に「¥」マークを、末尾には「ー」または「※」といった記号を付けることが推奨されます。
また、3桁ごとにカンマ(,)を打つことで、大きな金額でも読み間違いを防ぐことができます(例:¥1,234,567ー)。
インボイス制度導入後は、消費税の内訳を明確にすることが求められます。具体的には、軽減税率(8%)対象品目と標準税率(10%)対象品目を区分し、それぞれの税率ごとに合計金額と消費税額を明記する必要があります。
これにより、買い手側が仕入税額控除を正確に計算できるようになります。合計金額欄の下部や、明細行の最後に税率ごとの内訳を記載するスペースを設けるなど、分かりやすい表記を心がけましょう。

値引きや返品時の金額表記の工夫

取引の過程で値引きが発生したり、商品が返品されたりするケースも少なくありません。このような場合、納品書に金額をどのように記載するかが重要になります。
値引きが発生した場合は、元の単価と値引き額を明確に記載し、最終的な「値引き後単価」を提示することが一般的です。
明細行に値引き前の価格と、値引きとしてマイナス金額を別途計上する方法や、「値引き後単価」を記載し、備考欄に値引き内容を記載する方法があります。例えば、以下のように記載します。

品名A:10個 × @1,000円 = 10,000円
値引き:1個あたり100円値引き → -1,000円
合計:9,000円

一方、商品が返品された場合は、その分の金額をマイナスとして計上することがあります。
この際、該当する品目をマイナス数量またはマイナス金額で明細に追記し、合計金額から差し引く形で記載します。
例えば、「品名B(返品):-5個 × @500円 = -2,500円」といった具合です。
ただし、返品の場合は、別途「返品伝票」や「返還インボイス」を発行するケースも多いため、取引先の慣習や要請に従い、適切に対応しましょう。
金額のマイナス表記は、赤字で記載するなど視覚的に分かりやすくする工夫も有効です。

返品・返金時の納品書の書き方

返品時の納品書(受領書)の取り扱い

商品が返品された場合、通常の納品書とは異なる対応が必要になります。返品時には、売り手側が商品を受け取ったことを証明する「返品受領書」や「返品伝票」を発行することが一般的です。
これは、買い手側が商品を返品した事実を証明し、後の返金処理や会計処理の根拠となるためです。
返品受領書には、返品された商品の品名、数量、単価、合計金額、返品年月日などを記載します。
また、どの納品書に対する返品であるかを明確にするため、元の納品書番号を記載しておくことが重要です。
これにより、元の取引と返品処理が正確に紐付けられ、誤解や重複計上を防ぐことができます。
場合によっては、元の納品書の控えに返品があった旨を記載し、そのコピーを返品受領書として利用することもありますが、新たに専用の書類を作成する方が管理上は分かりやすいでしょう。

マイナス計上する際の注意点

返品に伴い、納品書上で金額をマイナス計上する際にはいくつかの注意点があります。
特に、複数の商品が混在する納品書の一部が返品された場合、どの品目が、どの数量だけ返品されたのかを明確に記載することが不可欠です。
マイナス計上を行う場合は、該当する商品の明細行に数量を「-5個」のようにマイナスで表記したり、金額を「-¥2,500」のように表記したりします。
また、全体の合計金額からもその分を差し引いた最終金額を記載します。
インボイス制度下では、返品によって売上金額が減少した場合、「売上返還の適格請求書(返還インボイス)」を発行する必要が生じることがあります。
この返還インボイスには、適格請求書発行事業者の登録番号や、返還にかかる消費税額などを記載する必要があります。
マイナス計上を行う納品書と、この返還インボイスの関係性について、税理士等の専門家と相談し、適切な処理を行うことが2025年時点では非常に重要です。

返金処理と関連書類

返品が行われた後は、買い手に対する返金処理が発生します。この返金処理を正確に行うためには、いくつかの関連書類が必要となります。
まず、前述の「返品受領書」は、返品された事実を証明する最も基本的な書類です。
これに加え、実際に返金を行ったことを記録する「返金伝票」や、会計システム上で売上をキャンセルしたことを示す「クレジットノート(売上修正伝票)」などを発行することが一般的です。
返金方法が銀行振込の場合、銀行の振込明細や、オンラインバンキングの履歴なども重要な記録となります。
これらの書類は、返金処理が正しく行われたことを証明し、税務調査などの際に提示を求められる可能性があるため、他の国税関係書類と同様に、法人であれば原則7年間(欠損事業年度は10年間)、個人事業主であれば原則5年間(消費税課税事業者は7年間)の保管が義務付けられています。
電子的に返金処理を行った場合は、電子帳簿保存法の要件に従ってデータ保存を行う必要があります。

納品場所や発行タイミングなどの注意点

納品先の正確な記載方法

納品書の「納品先」情報は、商品を確実に届けるために最も重要な項目の一つです。企業名、部署名、担当者名を正確に記載することはもちろん、「御中」や「様」の敬称も適切に使用しましょう。
特に、複数の事業所を持つ企業や、建設現場など特定の場所への納品の場合は、住所に加え、建物名、部屋番号、現場名などを具体的に記載することが重要です。
例として、以下のような詳細な記載が考えられます。

株式会社〇〇
△△事業部 購買課 御担当者様
東京都港区〇〇1-2-3 〇〇ビル5F

あるいは、

株式会社〇〇
〇〇建設現場 御担当者様
神奈川県横浜市〇〇1-2-3 (現場事務所宛)

納品場所が記載された納品書は、配送業者にとっても正確な配送をサポートする情報源となります。
誤配送による時間的・金銭的損失を防ぐためにも、納品先の情報は徹底した確認と正確な記載を心がけてください。必要に応じて、事前に納品先へ記載方法を確認することも有効です。

納品書と請求書の発行タイミングの違い

納品書と請求書は、どちらも取引に関する重要な書類ですが、発行されるタイミングと目的が異なります。
納品書は、商品やサービスを相手方に引き渡した際に発行され、その納品内容(品名、数量など)の確認を目的とします。
一方、請求書は、商品やサービスを引き渡した後、その対価の支払いを相手方に依頼するために発行されます。
一般的な取引の流れでは、まず納品書が発行され、後日、複数の納品書の内容をまとめて請求書を発行するという形が多いです。
ただし、取引内容によっては、納品書と請求書を兼ねる「納品書兼請求書」として1枚の書類で発行することも可能です。
この場合、インボイス制度に対応するためには、納品書に求められる情報に加えて、請求書に必須の項目(支払期限、振込先など)も記載する必要があります。
どちらの形式を採用するかは、取引先の慣習や自社の業務フローに合わせて選択しますが、発行のタイミングと書類の目的を明確に理解しておくことが、適切な書類作成に繋がります。

電子帳簿保存法と納品書のデータ保存

2024年1月1日以降、電子的に発行された納品書(PDFファイルや電子データなど)を受け取った場合、「電子帳簿保存法」の改正により、原則としてデータでの保存が義務化されました。
これは、紙媒体での保存が原則禁止となり、電子データをそのままの形式で保存することが求められるようになったことを意味します。
データ保存には、以下の「真実性の確保」と「可視性の確保」という要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保:タイムスタンプの付与、訂正・削除履歴の確保、改ざん防止のための事務処理規定の整備など。
  • 可視性の確保:ディスプレイやプリンタでの出力、検索機能(日付、金額、取引先など)の確保など。

これらの要件を満たすためには、電子帳簿保存法に対応した会計システムや文書管理システムの導入が非常に有効です。
紙で受け取った納品書をスキャンしてデータ保存する場合も、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。
2025年時点では、この電子保存義務化への対応は企業にとって喫緊の課題であり、適切なシステム導入と社内規定の整備が急務と言えるでしょう。

納品書への捺印(ハンコ)について

捺印の法的義務と実務上の位置づけ

納品書への捺印(ハンコ)は、法律によって義務付けられているものではありません。納品書は、発行者の意思表示を示すものとして、記名のみでも法的な効力は有効です。
しかし、日本の商習慣においては、捺印は書類の信頼性や真正性を高めるための重要な行為と認識されています。
そのため、多くの企業では、納品書に捺印をすることが一般的であり、特に大手企業との取引や、一部の業界では、捺印がない納品書は受け付けられないといったケースも存在します。
捺印は、「この書類は当社が正式に発行したものである」という意思表示となり、受け取る側にとっては安心材料となります。
法的な義務はないものの、実務上は捺印が求められることが多いため、自社の業務フローや取引先の慣習に合わせて、捺印の有無を判断することが重要です。
電子納品が増える中でも、紙でのやり取りが多い場合は、この慣習を理解しておく必要があります。

社印・角印の使用場面と意味

納品書に捺印する場合、一般的には「角印(社印)」が使用されます。
角印は、会社名が刻印された四角い印鑑で、日常的な業務書類(見積書、納品書、請求書、領収書など)に広く用いられます。
角印の捺印は、その書類が「会社の正式な書類である」ことを示す意味合いが強く、社内での決裁を経た上で発行されていることの証となります。
一方で、法的な契約や重要書類(契約書、登記申請書、株主総会議事録など)には、会社の代表者が法務局に登録している「代表者印(丸印)」が用いられます。
納品書に代表者印を使用することは稀であり、通常は角印で十分です。印鑑の押し方としては、印影が鮮明になるよう均一に力を加え、文字にかかるように押すのが一般的です。
これは、後からの改ざんを防ぐ意味合いも持ちます。<適切な印鑑を適切に使用することで、書類の信頼性が向上し、取引先とのスムーズな関係構築に貢献します。

電子契約・電子納品書における捺印の代替手段

デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、納品書の電子化が進んでいます。電子的に発行される納品書では、物理的な捺印はできません。
その代替として、「電子署名」や「タイムスタンプ」が広く利用されています。
電子署名は、文書の発行者が本人であることを証明し、文書が改ざんされていないことを保証する技術です。これにより、物理的な印鑑と同様に、書類の信頼性と非改ざん性を確保します。
また、タイムスタンプは、特定の時刻にその電子データが存在し、それ以降改ざんされていないことを証明するもので、特に電子帳簿保存法に対応する上で重要な役割を果たします。
多くの電子契約サービスやクラウド型会計システムでは、これらの電子的な認証機能が組み込まれており、電子納品書の発行から管理までを一元的に行うことが可能です。
電子化により、印刷・郵送の手間やコストが削減され、書類管理の効率化にも繋がります。2025年時点では、これらの電子的な代替手段の活用が、企業にとって標準的な業務プロセスになりつつあります。