「作りたくない」と感じる主な理由

マイナンバーカードの導入から年月が経ち、その利便性が語られる一方で、カードの取得や制度の利用に抵抗を感じる方も少なくありません。

なぜ「作りたくない」と感じるのでしょうか。主な理由を深掘りし、その背景にある国民感情を理解することが重要です。

個人情報管理への不安と情報漏洩のリスク

マイナンバー制度への抵抗の根底には、「国にすべてを管理されてしまうのではないか」という国家による個人情報管理への漠然とした不安と不信感があります。

「あらゆるデータを国が管理しすぎていて怖い」といった声に代表されるように、プライバシーが侵害される可能性への危惧は根強く、政府による情報の一元管理が、個人の自由を制限するのではないかという懸念につながっています。

さらに、情報漏洩のリスクも大きな不安要素です。

マイナンバーカードやそれに紐づく情報が漏洩し、悪用されるのではないかという懸念は根強く、特に紛失や盗難による不正利用への不安が指摘されています。過去の個人情報関連の事件やニュースが、この不信感を増幅させている側面もあり、万が一の情報流出が個人の生活に深刻な影響を及ぼすことへの恐怖感が、カード取得をためらわせる大きな要因となっています。

実質的な義務化への反発と手続きの煩雑さ

マイナンバーカードの取得は「任意」とされていますが、2024年秋に健康保険証が原則廃止され、マイナンバーカードと一体化される方針(マイナ保険証)が示されたことで、多くの人が「実質的な義務化」と受け止めています。

カードがなければ不便になる状況が進むことへの反発は強く、政府の「任意」という建前と、現実の制度運用との間にギャップを感じる国民が多いのが実情です。

また、カードの申請や受け取り手続きが煩雑であると感じる人も少なくありません。

特にデジタルデバイスの操作に不慣れな高齢者や、身体的な理由で自治体の窓口に直接出向くことが難しい方々にとっては、申請書の記入、必要書類の準備、顔写真の提出、そして最終的なカードの受け取りといった一連のプロセスが、高いハードルとなっています。オンライン申請も可能ですが、その手順が複雑だと感じる声も聞かれ、利便性向上への期待とは裏腹に、心理的な負担となっている側面があります。

制度への理解不足とメリットの不明確さ

マイナンバー制度がどのような目的で導入され、具体的にどのようなメリットがあるのかが、国民全体に十分に理解・実感されていないことも、カード取得が進まない一因です。

制度の仕組みが複雑であるため、多くの人がその全体像を把握しきれておらず、「自分には関係ない」「メリットがよく分からない」と感じています。

例えば、行政手続きの簡素化やオンライン申請の利便性といった具体的なメリットは、実際にそれらのサービスを利用しないと実感しにくく、日常生活の中で直接的な恩恵を感じる機会が少ないため、カードを取得する明確な動機につながりにくいのが現状です。

実際に、2025年2月末時点でマイナンバーカードの保有枚数は人口の約78.0%に達していますが、普及率には地域差があり、宮崎県が84.4%と高い一方で、沖縄県は66.6%にとどまるなど、全国一律ではありません。

この地域差は、制度への理解度やメリットの認識度の差に起因している可能性も考えられ、情報提供の一層の強化が求められています。

マイナンバー制度、同意しないとどうなる?

マイナンバーカードの取得は任意であるものの、制度の進行に伴い、「同意しない」選択が日常生活に与える影響は無視できないものになってきています。

特に、健康保険証との一体化は、多くの国民にとって直接的な変化をもたらすでしょう。

健康保険証の原則廃止と資格確認書

最も大きな変化は、2024年秋を目途に健康保険証が原則廃止され、マイナンバーカードと一体化する方針が示されている点です。

これは、マイナンバーカードを持たない場合、これまで通り紙の健康保険証を使って医療機関を受診することができなくなることを意味します。

ただし、マイナンバーカードを持たない国民が保険診療を受けられなくなるわけではありません。

その代わりに、申請に基づいて「資格確認書」が交付されることになります。この資格確認書を医療機関に提示すれば、これまで通り保険診療を受けることは可能です。

しかし、資格確認書には有効期限が設けられており、定期的な更新手続きが必要となるため、カードを持つ場合に比べて手間が増えることは避けられません。また、医療機関での本人確認に時間がかかるなど、利便性の面で差が出てくる可能性も指摘されています。

各種行政サービスでの不便さの増加

マイナンバーカードが普及し、行政サービスのデジタル化が進むにつれて、カードがないことで利便性が低下する場面は徐々に増えていくと予想されます。

現在でも、マイナンバーカードがあれば住民票の写しなどをコンビニエンスストアで取得できたり、確定申告(e-Tax)をより簡単にオンラインで行えたりするなどのメリットがあります。

これらのサービスは、カードがなくても他の方法で利用できますが、手間や時間がかかることが多くなります。

例えば、行政機関間の情報連携により、各種行政手続きで住民票や課税証明書などの添付書類が省略できるようになりますが、カードを持たない場合は、引き続きこれらの書類を自分で用意して提出する必要が生じます。これにより、行政手続きの迅速化や利便性向上といった制度の恩恵を十分に享受できず、結果としてカードを持つ人との間で「デジタルデバイド」(情報格差)が広がる可能性があります。

法的な強制力とその実態

マイナンバーカードの取得は、法律上「任意」とされており、カードを持たないことに対して罰則が科せられることはありません。

しかし、健康保険証の原則廃止の事例に見られるように、国が制度の普及を進める中で、カードを持たないことが徐々に「不便」な状況を生み出しているのが現状です。これは、国民が「実質的な義務化」と感じる大きな要因となっています。

政府は、カードを持たない人が不利益を被らないよう配慮する方針を示していますが、利便性の面ではカードを持つ人に劣る状況は避けられないでしょう。

「同意しない」という選択は個人の自由ですが、それは同時に、最新の行政サービスや簡便な手続きの恩恵を享受しにくくなる可能性を受け入れることでもあります。今後の制度変更やデジタル化の進展によっては、その影響がさらに大きくなることも考えられるため、情報収集を怠らず、自身の状況に合わせて判断していくことが重要です。

マイナンバー制度への懸念と誤解

マイナンバー制度には、個人情報の管理や情報漏洩のリスクに対する懸念が根強く存在します。

しかし、これらの懸念の多くは制度の仕組みに関する誤解から生じている場合も少なくありません。ここでは、主な懸念と、それに対する正しい理解を深めていきましょう。

国家による監視・管理への誤解と実態

「国にすべての個人情報を管理され、監視されるのではないか」という不安は、マイナンバー制度に対する最も一般的な懸念の一つです。

しかし、これは制度の仕組みに対する誤解に基づいています。マイナンバーカードのICチップには、所得や税、年金といったプライバシー性の高い情報は記録されていません

記録されているのは、氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー、顔写真などに限定されており、これだけでは個人の詳細なプライバシーが明らかになることはありません。

また、情報連携の範囲も無制限ではありません。

マイナンバー法に基づき、情報連携は「」「社会保障」「災害対策」の3分野に限定されており、行政機関がこれらの目的以外で個人情報を無断で利用したり、機関間で自由に共有したりすることは法律で厳しく禁止されています。これにより、政府による過度な監視や管理は制度上不可能であり、国民のプライバシーは厳重に保護されています。

情報漏洩リスクへの過度な不安

「マイナンバーカードやそれに紐づく情報が漏洩し、悪用されるのではないか」という情報漏洩のリスクに対する懸念も根強いものがあります。

しかし、マイナンバーカードには高度なセキュリティ対策が講じられており、その安全性が確保されています。

具体的には、パスワードロック機能(設定された回数以上間違えるとロックがかかる)、ICチップの暗号化、顔写真による本人確認といった多層的なセキュリティ対策が施されています。これにより、仮にカードを紛失したり盗難に遭ったりしても、第三者が容易に情報を引き出したり、悪用したりすることは非常に困難です。

さらに、万が一マイナンバーカードが悪用され、例えば不正に借金をされた場合でも、その被害者が返済義務を負うことはないとされています。

マイナンバー法では、不正な利用に対して厳しく処罰することが定められており、利用者の被害を最小限に抑えるための法的保護も整備されています。これらの対策は、国民の情報漏洩リスクに対する過度な不安を軽減するために設計されています。

制度の目的と機能に関する誤解

マイナンバー制度の目的や、カードの具体的な機能に関する理解不足も、様々な誤解を生む原因となっています。

制度は「行政手続きの迅速化」「国民生活の利便性向上」「不正給付の防止」を主な目的としており、国民の負担軽減と行政の効率化を目指すものです。

例えば、行政機関間の情報連携により、これまで各種行政手続きで必要だった住民票や課税証明書などの添付書類が省略可能になりました。

これは、国民が役所に出向いたり、書類を取り寄せたりする手間を大幅に削減し、手続きにかかる時間とコストを減らすことにつながります。また、オンラインでの申請手続きも簡素化され、いつでもどこでも行政サービスを利用できる環境が整いつつあります。

さらに、マイナンバーシステムは国内インフラで運用されており、法的枠組みによって外国への情報持ち出しは厳格に禁止されています。

これにより、海外からのサイバー攻撃や国家による情報収集といった特定の誤解や懸念を払拭し、日本の法制度の下で厳重に管理されていることを理解することが重要です。

マイナンバー制度を正しく理解するために

マイナンバー制度は、現代社会における行政の効率化と国民の利便性向上を目指す重要な社会基盤です。

制度への懸念や誤解を解消し、その真の価値を理解するためには、セキュリティ対策、制度の目的、そして今後の展望について正しく認識することが不可欠です。

セキュリティとプライバシー保護の仕組み

マイナンバーカードには、国民の個人情報を厳重に保護するための多層的なセキュリティ対策が施されています。

まず、カードに搭載されているICチップは高度に暗号化されており、内部の情報は専門的な技術なしには読み取れません。

また、ICチップに記録されている情報は非常に限定的で、所得や税、年金などのプライバシー性の高い情報は記録されていません。これにより、カード単体から個人の詳細な情報が漏洩する心配はありません。

さらに、カードの利用にはパスワードロックが設定されており、一定回数パスワードを間違えるとロックがかかる仕組みになっています。表面に記載されている顔写真と、公的個人認証サービスによる本人確認を組み合わせることで、成りすましによる不正利用を防止します。

万が一、カードを紛失したり盗難に遭ったりした場合でも、24時間365日対応のコールセンターでカードの一時利用停止が可能であり、悪用された場合の返済義務がないなど、利用者を保護する法的枠組みも整備されています。これらの対策が、マイナンバーカードの安全性を支えています。

マイナンバー制度の真の目的とメリット

マイナンバー制度は、単なる個人識別番号の付与にとどまらず、社会全体の効率化と国民生活の質の向上を目指すものです。その主な目的は、以下の3つに集約されます。

  • 行政手続きの迅速化: 複数の行政機関に提出していた書類が不要になるなど、手続きが簡素化されます。
  • 国民生活の利便性向上: オンラインでの申請が容易になり、時間や場所を選ばずに行政サービスを受けられるようになります。
  • 不正給付の防止: 税や社会保障分野で正確な情報に基づいた適切な給付・徴収が可能となり、公平で公正な社会の実現に貢献します。

例えば、行政機関間の情報連携により、これまで住民票の写しや課税証明書などを準備して提出していた手続きにおいて、それらの書類が不要となり、国民の手間と負担が大幅に軽減されます。また、コンビニエンスストアでの証明書発行サービスや、確定申告のe-Tax利用など、デジタル技術を活用した利便性の高いサービスが提供されています。これらのメリットを理解することで、制度への見方も変わるかもしれません。

制度改定と今後の展望

マイナンバー制度は、社会情勢や国民のニーズに合わせて常に進化しており、重要な制度改定が行われています。

特に注目すべきは、2024年秋を目途に健康保険証が原則廃止され、マイナンバーカードと一体化する方針です。これは、マイナンバーカードが社会インフラとしての重要性をさらに高めていくことを示唆しています。

今後も、医療、介護、災害対策など、多岐にわたる分野での活用が期待されており、将来的にはさらに多くの行政サービスや民間サービスとの連携が進むことで、カードの利便性は一層向上するでしょう。一方で、カードを持たない方への「資格確認書」の交付など、デジタル化の恩恵を受けられない人が不利益を被らないための配慮も続けられています。

宮崎県が84.4%と高い普及率を示す一方で、沖縄県が66.6%にとどまるなど、地域差がある現状も踏まえ、政府は国民一人ひとりが制度を正しく理解し、安心して利用できるよう、情報提供とサポート体制の強化に努めています。

マイナンバー制度は、私たちの生活をより豊かに、より便利にするためのツールとして、今後も発展していくことが期待されます。

マイナンバー制度に関するQ&A

マイナンバー制度に関してよく寄せられる疑問とその答えをまとめました。不安や疑問を解消し、制度への理解を深める一助としてください。

Q1. マイナンバーカードは本当に必要なの?

A. 現時点では、マイナンバーカードの取得は法的に任意とされています。

しかし、2024年秋には健康保険証が原則廃止され、マイナンバーカードと一体化されるため、カードを持たない場合は「資格確認書」を別途申請する必要が生じるなど、利便性が低下します。この動きは、マイナンバーカードが日常生活において実質的に不可欠なツールとなりつつあることを示唆しています。

行政手続きのオンライン化が進む中で、マイナンバーカードは本人確認や電子署名の役割を担い、住民票のコンビニ交付や確定申告(e-Tax)など、様々なサービスをより迅速かつ簡単に利用するための重要なツールとなりつつあります。

将来的には、カードがあることで得られるメリットがさらに増えることが予想されるため、ご自身のライフスタイルや行政サービスの利用状況に合わせて、取得を検討することをお勧めします。

Q2. 個人情報が漏洩する心配はないの?

A. マイナンバーカードには、国民の個人情報を厳重に保護するための高度なセキュリティ対策が講じられていますので、ご安心ください。

例えば、パスワードロック機能やICチップの暗号化、そして券面の顔写真による本人確認など、多層的な対策が施されています。これにより、カードを拾得した第三者が容易に情報を引き出したり、成りすまして悪用したりすることは困難です。

特に重要なのは、ICチップには所得や税、年金などのプライバシー性の高い情報は記録されていない点です。カード単体からこれらの情報が漏洩することはありません。万が一、カードを紛失したり盗難に遭ったりした場合でも、24時間365日対応のコールセンターで一時利用停止が可能です。また、悪用された場合でも、その被害者が返済義務を負うことはないなど、法的な保護も整備されています。

Q3. カードがなくても保険証は使える?

A. 2024年秋に健康保険証は原則廃止されますが、マイナンバーカードをお持ちでない方には、申請に基づいて「資格確認書」が交付されます。この資格確認書を医療機関に提示すれば、引き続き保険診療を受けることができますのでご安心ください。

ただし、資格確認書には有効期限があり、定期的な更新手続きが必要になることや、医療機関での本人確認に時間がかかるなど、マイナ保険証を利用する場合に比べて、若干の手間や不便さを感じる場面が出てくる可能性があります。

政府は、カードを持たない方が不利益を被らないよう努めていますが、利便性の面ではマイナ保険証に軍配が上がると言えるでしょう。長期的に見れば、マイナ保険証への切り替えを検討することも、医療機関受診の手間を減らす賢明な選択と言えます。